復活novel2

想いに蓋を 1
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※獄寺視点



捕まれた手首が熱い。








突然俺の身に降り掛かったこの現状をどう受けとめればいいのだろう。

バイトを終え、コンビニに夜食を買いに寄って、この男と出くわしてしまった。
焼き肉弁当とエビチリ弁当…。どちらにするか迷わなければ出会わなかっただろうに。

何か言いたげな視線をかわして帰ってしまおうとした所、制されてしまった。


「……こ、こんなに遅く、どうしたんだ?」


そう聞かれれば、


「………バイト。学校には許可取ってる。」


こう返せば大抵この場はおさまる。
だが、山本は俺の手を掴んだまま離そうとしない。


「獄寺…その……俺、お前に謝りたいし、きちんと話しておきたい事があるんだ。」


きちんと話しておきたい事…。
心臓が跳ねた。山本が俺に対して謝意を示そうとしている。

あの夜の事を話そうとしているのではないか…。山本からは張り詰めた緊張感が伝わってきて、俺は息を呑んだ。



俺の中で、あの夜がやっと過去になろうとしていた。
初めて恋をして、嫉妬して、……ガキみたいに拗ねて。そんな時、酔った勢いで身体を重ねた。

熱い想いをぶつけられ、呆気に取られながらも心の何処かで俺だけを捉える瞳に心地よさを感じていた。
それから、扱いの分からない感情を抱えたまま、ぐるぐる悩んで、……

指輪を無くしてから、心穏やかではなかったが、山本への不条理な感情で頭を悩ませる回数は減った。

行き場のない恋情から目を逸らす事で、少しは落ち着いて現状を見ることが出来るようになった。

いつまでも意固地になって体育の授業に参加しないって事は、現状を複雑にするだけなのだ。今みたいに…。

もう少し素直に、スマートに事を運ぶとするなら───


単位を落とさず進級して、卒業して、…心が解放されるときを待てばいい。


もう少し素直に、…


恋情には蓋をするけど、自分の心を偽る必要はない。やっとそう思えるようになった。

山本の本心に触れるのは怖い。
だから、当たり障りのない生活を送って、こいつの視線から逃れなければ。


「…は、話って……?」


「……………!」


俺が応じると予測していなかったのか、山本は目を丸くして、手首を離した。

正直、あの夜の事だったらどうしようかと構えていたが、多分、違う。

何となく、雰囲気で。


「獄寺……今までごめん。俺、お前と向き合ってたつもりだったけど、実際はそうじゃなかった。俺が獄寺に言いたい事もたくさんあるし、獄寺も俺に伝えたい事があるんじゃないか?今度、時間を作って話したい…。単位だったらまだ何とかなるから。」


良かった。

授業の事だ。

だったら…手っ取り早く…。


「時間なら今からだってあるけど。」


このいざこざに決着を。





2へつづく

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