復活novel2
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六道先生はそのオッドアイをぱちくりとさせ、俺を不思議そうに見ている。
その間、周囲の話し声や、食器をカチャカチャさせる音など、あらゆる可聴音が耳に付いて離れなかった。
「山本先生、ご存知なかったですか?Dr.シャマルは獄寺隼人の保護者に当たる人物ですが…」
「ほ、保護者!?」
そんなの初耳だ。
驚くと共に、獄寺の家族構成等を露ほども知らない自分自身に溜め息をつきたくなった。
六道先生は「他クラスの生徒ですしね。」なんてフォローなのか何なのか、話を進める為に言葉をこぼした。
何でも、獄寺は幼少時に女手一つで育ててくれた唯一の肉親である母親を亡くしたそうだ。天涯孤独の彼を引き取ったのがシャマル…
まるでドラマか何かみたいに雲を掴むような話だが、保健室での一件で、それも現実味が帯びてくる。
「一度彼とも話し合ってみて下さい。」
「はい……そうですね。」
このやり取りを最後に、獄寺の話題は幕を引き、世情についてや果ては本校の長、ザンザス理事長の浮いた噂まで、何でも話した。
今後の身の振り方のアドバイス等、いろいろと為になる話をしてくれて、和やかな時間が過ごせたと思う…。
しかし、……
シャマル先生か…
校医の名がずっと頭の何処かで引っ掛かっていた。
だってそうだろ、
シャマル先生は獄寺が体育の授業に参加していない事を知っているはず。
それなのに、保護者として一度も相談を受けていないのだ。毎日のように保健室に顔を出していたので、話す機会なら五万とあった…。
六道先生と獄寺は面談を通して話し合いを進めているようだが、シャマル先生とはどの程度話されていたのだろうか。
渦中にいるはずの俺が、完全に蚊帳の外にいたなんて、……そう思うとまた肩の荷が増えた気がした。
その辺りの事をいろいろと尋ねたかったが、一度降りた緞帳をこじ開けるような余力なんてなくて、六道先生とは和やかな空気のまま別れることとなった。
腑甲斐ない自分に苛立ちを覚えながら、何の気なしに上着のポケットに手を突っ込んだ。
「…………………」
最寄りの駅からの道のりをそうして歩いていたのだが、指先に物足りなさを感じた。
不思議な感覚にとらわれながら夜道を進み、見慣れたアパートが視野に入ってくる。と、同時にその正体がはっきりとした。
ポケットに入れていたはずの指輪がない────
5へ続く。