復活novel2
□持ち主巡り 1
1ページ/3ページ
※山本視点
持ち主不明の指輪。
でも、冷静によくよく考えてみると案外直ぐに持ち主を特定出来るような気がした。
と言うのも、独り身で新米教師という俺の立場を利用して、部屋に入り浸り酒宴の場にする人物が数名いるからだ。
獄寺の指に似合いそうだとか、恋情がそのようなビジョンを見せたせいで当初は驚いたが、なんて事はない。
きっと誰かの忘れものだ。
「……にしても女モノかぁ…」
女性を部屋に上げた事はないので、いまいちピンとこないが、最近一緒に酒を飲んだメンバーを一人一人当たる事にした。
全員女はいないはずだが、もしかしたら「実はプロポーズする相手がいたのに指輪落としちゃって…」みたいな面白い話が聞けるかもしれない。
──────────
そして昼休み。
俺は教員のみが事前に注文出来る弁当を片手に、中学校舎の家庭科室を訪ねた。高校校舎と中学校舎は二階と一階に取り付けられた渡り廊下を介して自由に行き来出来る。
職員室は二階にあるので、二階の渡り廊下を利用しするのが常だが、中学年にも高校教師である俺の名は通っているらしく、よく声を掛けてくれる。
だが、知らない顔の生徒に声を掛けられるのは少々照れくさい。
そんなくすぐったい感情を抱きながらなので、家庭科室までの道のりはどうしても足早になる。
わざわざ中学校舎の家庭科室に移動するのは、昼休みくらい生徒の視線から逃れたいという理由でだ。
学食で昼食を済ます教員もいるが、この時間帯は生徒で溢れかえる。休んだ気になんてなれないのだ。
昼休みを昼休みらしく過ごしたいという考えから、大概俺は家庭科の実習準備室なる所で昼食を取る。
ここなら取るに足りない愚痴から、日常のどうでもいい話題を適当に聞き流してくれる相手もいる事だし。そいつは何週間か前に部屋でドンチャン騒いでいたメンバーの一人でもある。
「入るぞー。」
“生徒は出入り禁止!!”と隆々とした筆跡で書かれたプレートを揺らしながら準備室のドアを開けると、流れるような銀髪を結いもせず、流れるままに雑然と下ろしている男が一人、事務椅子に腰掛けこちらを睨んだ。
険のある目付きをしているが、これは天性のもので決して怒気を表したものではない………多分。
「ゔお゙ぉ゙ぉぉぉい!ノックぐらいしろっていつも言ってんだろうがぁ!」
初見なら卒倒してしまいそうな鋭い眼光に加え、地鳴り声で宣うが、これも天性のものなので怒ってるのかどうなのか、……。
いや、これは少し怒ってるな。
表情と声色だけでは怒りの度合いが判別出来ないが、取り敢えずいつもの調子で「悪い悪い」と笑って返した。
「悪いと思ってんならいい加減改めろよ…。」
「だな。」
まるで他人事のように笑いながらパイプ椅子を組み立る俺に、嘆息を洩らすこの白銀男の名はスクアーロ。
中高一貫校であるこの学園の中等部で家庭科を担当する教師だ。
口が悪けりゃ、目付きも悪い。そんな強面な彼に、家庭科の教師が勤まるのかと問われれば、意外にもかなりマッチングしていると言っても相違ない。