復活novel2

その温もりは誰のもの?
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「はなざとう。」の華彩様より頂きました!
素敵なお話ありがとうございます!





「うしっ!終了。」


獄寺は今まで目を通していた書類を机に置き、眼鏡を外した。
出張帰りの疲れもあり、無意識に目を押さえ深く息を吐く。


「おっ。サンキュー獄寺。」


そんな獄寺に山本は礼を言い、申し訳なさそうに眉を下げて笑った。


「悪かったな、出張から帰ってすぐに仕事頼んじまって。」

「いや、いい。オレとしても早く処理しときたかったし。」

「…そっか。」


獄寺の言葉を聞き、内心の心配を隠して山本は軽く応えた。

学生の時から獄寺に特別な感情を抱いていた山本。気持ちを伝えることが出来ず、日々悶々としつつも、常に仕事に一生懸命すぎる獄寺を気遣っている。

でも、そんな風にあからさまに『心配している』と言えない山本は、極力明るい声で、仕事とは関係ない話を振ることしか出来ない。


「しっかし、久々にここ入ったぜ。」


山本の報告書の確認と調べ物の為に二人がいた場所 資料室を見渡し、山本は言った。


「学生の時ですらこーゆーとこ入った記憶がねぇ。」

「アホか…。」


獄寺は呆れ顔で、隣に座る山本に視線を向ける。


「情報収集は基本中の基本だろうが。ちゃんと…」


獄寺の小言が続けられる前に、ガチャン。とゆう機械的な音と共に部屋が急に真っ暗になってしまった。


「なっ!」

「なんだぁ!?」


突然の出来事に、獄寺も山本も驚き、それと同時に身構えた。どんな微かな音も聞き逃さないよう神経を集中させる。


「敵…か?」

「気配はねぇみてぇだけど…。」


極々小さな声で会話をする二人。

暗闇に包まれたこの空間には二人の押し殺した微かな呼吸と、冷たい夜風が窓をカタカタと揺らす音しかなかった。

程なくして、黙って気配を探っていた獄寺の耳に、山本の「あ…」とゆう気の抜けた声が聞こえる。


「なんだよ。」

「獄寺、今何時だ?」

「はぁ?こんなときに…」

そう言いつつも、獄寺は電気が消える前に見た壁掛けの時計を思いだす。


「確か、日付が変わるちょっと前、だったような…。」

「やっぱり…。」


山本はボソリと呟いた。


「んだよ、やっぱりって。」

「悪ぃ、獄寺。」

「あ?」

「今日セキュリティのメンテするから、深夜12時以降は各施設に入んなって…ジャンニーニが。」

「……………はぁ!!!」


今の今まで小声で話していた獄寺だったが、山本の言葉につい大きな声を出してしまった。


「なっ!んな事聞いてねぇぞ!!」

「獄寺が出張行ってる最中に、急遽決まったんだってよ。獄寺、こっち戻ってから誰かに会ったか?」

「いや、真っ先にお前に会ってここ来たから、誰とも会ってねぇ…。」

「あぁ〜…。だから誰も言えなかったのか。」

「っつか、お前は知ってたんじゃねぇのかよっ!!」

「いや…、忘れてて。」


「ハハ…悪ぃ…」と、山本は乾いた笑いを漏らした。


「おまっ…!……はぁ、てめぇの記憶力を今さらとやかく言っても遅ぇか…。」


溜め息と共に、獄寺は10年の長い年月を思い返し、現状を確認する。


「じゃあ当然、扉もロックかかってるっつー事だな。」

「ああ。一旦機能を全部停止するっつってたし。」

「はぁー。」


獄寺はもう一度盛大に溜め息を吐いた。
その溜め息を聞き、ただでさえ獄寺からの評価があまり良くないと思っている山本は、焦ったように打開策を提案する。


「あっ!でも、今から携帯でジャンニーニに連絡してロック解除してもらえばっ…」

「こんな間抜けな理由で仕事中断なんてさせらんねぇよ。」


その打開策も、獄寺のもっともな意見によって却下された。


「…しょーがねぇ。メンテ終わるまで待つか。」

「えっ!」


獄寺が出した結論に山本は声を上げる。


「でもっ、お前疲れてんじゃねぇ?」

「あ?まぁ…疲れてねぇとは言わねぇけど…」

「ちゃんと休まねぇと!」

「んな事言われても…」


山本の勢いに圧されながら、獄寺は声も小さく言う。


「ここの椅子寝にくいし、なんか…寒くなってきたし。」


真冬ではないが、だいぶ空気がひんやりとしている季節。深夜に差し掛かった時間ではいくら建物の中でも寒いくらいだった。


「空調も切られちまったみてぇだな。」


獄寺は自らの腕を擦った。

「そんな寒ぃか?」

「おめぇは寒くねぇのかよ。」

「うん。」

「くそっ…」


ケロリと答える山本に、何だか自分が負けたような気になって獄寺は悪態をつく。


「おめぇと違ってオレは繊細なんだよっ!だいたい……くしゅっ!!」


ズズ…、と獄寺は鼻をすする。


「くっそぉ、マジで寒ぃ…。」

「おいおい大丈夫かよ!マジで風邪ひくぞ。」


山本は自分の着ていたスーツのジャケットを脱ぎ、暗闇の中、手探りで獄寺に渡そうと手を伸ばした。
すると、ヒヤリと冷たいものが山本の手に触れる。


「冷たっ!なんだコレ!?」


反射的に言った言葉に獄寺は食って掛かる。


「‘なんだコレ’だと!寒ぃと手が冷たくなんのはしょうがねぇだろっ!!」

「えっ!?さっきの…獄寺の手?」

「だったらなんだ!悪ぃかよっ!」


山本は再び獄寺に手を伸ばし、野生の勘的なにかで視界ゼロの中、獄寺の手をピンポイントでガシッと掴んだ。


「な、なんだよ…。」

「獄寺っ!早く暖まらねぇと!!」

「だっから此処じゃ無理だっての!」


獄寺の異常なまでに冷えた手を握り、山本は焦り、そして言った。


「オレがっ!暖めてやるから!!」
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