復活novel2
□失せ物の行方 1
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※獄寺視点
今日も西洋の庭園を思わせる学園の中庭へと足を運ぶ。
夏は緑が生い茂るが、今はすっかり秋の装いをしている。冬になれば枯れ葉すら姿を消すのだろう。
「見つかんねー…」
俺はベンチに腰掛けて、苛立たしげにこぼす。
背もたれに背を預け、右手を太陽にかざした。秋の頼りない陽光に包まれて、人差し指にあるシルバーの髑髏が重く光る。
中指の付け根には、白い指輪の跡がうっすらと見えて、また舌打ちした。
屋上、喫煙所、中庭……学園内で訪れた喫煙場所は全て回った。後探していない所は教室や保健室くらいだが、流石に室内で落としたら気付くだろうし、そちらはあまり期待していない。
一体いつ、どの時点で無くしたのか見当が付かない。山本とあんな事があってから注意力散漫で、通学路でうっかり落としてしまい、そのまま端の溝に…
そんな事だってあり得る。学園外を捜索範囲に加えると、もう見つかる気がしない。
「はぁ…………」
俺は今日何度目かのため息をこぼし、中庭を後にした。
気が進まないが、とりあえず保健室に向かう。山本との一件以前にはよく利用していたし、万が一という事がある。
シャマルにはガーゼを取り替えに来たとでも言おうか。
……もともとが軽傷なだけに、傷を理由に保健室を訪れるのも気が引けるが、サボりに来たと言って追い出されるよりましな気がする。
俺は億劫な気持ちを押し殺して、保健室の扉をスライドさせた。
「あ?……隼人か。サボりなら他を当たれ。」
開口一番コレだ。
どうやら最悪のタイミングで来てしまったらしい。事務机にはファイルや書類が散乱していて、一心にシャマルはそれらに筆を走らせていた。
だから溜め込まずに毎日少しずつ消化しろって言ってんのに…
そう頭の隅で考えながら、俺は用意していた言葉を口にした。
「ガーゼ、替えに来た。」
すると、シャマルは眉間の皺を一層深くしてから大きなため息をついた。
ペンを無造作に放り投げて、ガーゼをストックしている棚に、事務椅子に腰掛けたまま移動する。
錆付いたコロがキーキーと嫌な音を立てた。
その間、俺は白い床に視線を走らせ、捜索を開始する。清掃の行き届いた床だ。
…………………あ。
俺はバカだ。
人の手が隅々まで行き届いた保健室で落とし物をした所で、見つかるはずないのに…
だけど、もう遅い。
俺は既に、全てを見透かす大人の視線に捕らえられていた。
ガーゼを片手に、シャマルは口を開く。
「で、今日は何しに来たんだ?」