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熱愛
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「カーネーション…?」


骸から手渡されたのはピンクの花びらを付けた一輪のカーネーションだった。

花屋でわざわざ買ってきたのだろうかと思い、尋ねるともらったのだと言う。


「……………もらった……」


花を手渡すなんて、普通好意を持っている人間がする行為だ。

一体何処のどいつだ。

いや、恋人を持つ身でありながら花を受け取るのもいかがなものか。


綱吉の表情が曇るが、骸は背を向けて羽織っていたジャケットを脱いでいるので気付かない。

その背中が語った。


「たまには人助けもしてみるものですね。」


「……え?」


「いえね、信号機のない横断歩道でおばあさんが立ち往生してたので、一緒に渡ってあげたんですよ。」


ジャケットをハンガーに掛け終えて、こちらを振り向いた骸の表情は、なんだかいつもより清々しい様子だ。


「お礼に花束の中から一輪頂いたんです。」


なんだ……。

感謝の意が込められたものだと分かると、ホッと胸を撫で下ろした。

しかし、骸がおばあさんの手を引いて横断歩道を渡る図は絵になると言うか…

何だかほのぼのとした気持ちにさせられる。

そんな愛他精神の持ち主に対して、少しでも疑念を抱いてしまった自分が恥ずかしくなり、手にしたカーネーションをそっと撫でた。


「ところで綱吉くん。このカーネーションの花言葉はご存知ですか?」


花言葉なんて普段から気に留めないので全く知識はない。


「なんだろ。母の日に贈られるものだし、感謝とかそういう意味合い…?」


「ええ、母への愛というのもありますが、それは赤いカーネーションの花言葉です。同じカーネーションでも色毎に意味が異なります。」


「へぇ。そうなんだ。」


「白は“私の愛は生きている”。そしてピンクは……」


骸は少し勿体を付けるようにそこで言葉を区切り、カーネーションを持つ綱吉の手を両手で覆った。


「なっ………」


突然手を握られ言葉を失う。

顔が近づいてくるのが分かったので、綱吉はカーネーションから視線をそらすことができず、そのままの姿勢で硬直した。


「ピンクは“熱愛の告白”です。…僕には貴方だけです。愛してますよ。」


そう言って、骸は恭しく綱吉の額に口付けた。




2010.05.20


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