SS

飴色1
1ページ/1ページ

あぁ…怠い…


身体中が熱い……


水……水……



心奥で喉の渇きを訴えると、不思議な事に徐々に喉が潤い始めた。

しかしそれは渇望していた水ではなく、後味は芳ばしい。

変わった味わいだが、初めて出会うものではない。


何だったっけ……


綱吉はゆっくり開眼すると、漆黒の瞳が直ぐそこにあった。


「あ……雲雀さん。俺………」


「大丈夫?お風呂で気を失ったんだよ?」


その一言で頭の中で漂っていた霧が晴れたように、全てが明らかになった。

雲雀の邸宅にある大きな浴室で情事が行われたのだ。

しかしそれは半ば強制的に雲雀から仕掛けてきたものだ。綱吉が従順なのを知っての行為なので、雲雀もばつが悪いと感じているらしく、冷えたタオルで額を拭ったりといつもより優しい。


「大丈夫なの?」


しまった…

深い闇色の瞳に吸い込まれかけていたらしく、慌てて返事をする。


「は、はい。もう大丈夫です。」


とは言ったものの、喉の渇きはまだ満たされておらず、ここは正直に話した。


「あの…何か飲み物を頂いてもいいですか?」


雲雀は「ああ、」と言葉をもらしてから、木製のローテーブルに手を伸ばした。

再び帰ってきた手には、薄い飴色をしたグラスが握られていた。

いや、よく見ると飴色なのはグラスに入っている液体だ。
角張った氷が一つ浮いていて、沢山の水滴をまとったグラスはキラキラと美しく輝いていた。

雲雀はそれを躊躇なく、ぐいと口に含み、そのまま綱吉に口付けた。


「んっ……っ……」


よく冷えた液体が少しずつ注がれる。


もっと…と、雲雀の口を舌で突くと少し量を足して注いでくれた。


綱吉の喉が小気味よい音を立てて飲み干していく。


あ、この味………


思い出したその味は、雲雀がよく出してくれるそば茶だった。


とたんに口の中が芳ばしくなった。



2010.05.20

続編→飴色2


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ