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□飴色1
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あぁ…怠い…
身体中が熱い……
水……水……
心奥で喉の渇きを訴えると、不思議な事に徐々に喉が潤い始めた。
しかしそれは渇望していた水ではなく、後味は芳ばしい。
変わった味わいだが、初めて出会うものではない。
何だったっけ……
綱吉はゆっくり開眼すると、漆黒の瞳が直ぐそこにあった。
「あ……雲雀さん。俺………」
「大丈夫?お風呂で気を失ったんだよ?」
その一言で頭の中で漂っていた霧が晴れたように、全てが明らかになった。
雲雀の邸宅にある大きな浴室で情事が行われたのだ。
しかしそれは半ば強制的に雲雀から仕掛けてきたものだ。綱吉が従順なのを知っての行為なので、雲雀もばつが悪いと感じているらしく、冷えたタオルで額を拭ったりといつもより優しい。
「大丈夫なの?」
しまった…
深い闇色の瞳に吸い込まれかけていたらしく、慌てて返事をする。
「は、はい。もう大丈夫です。」
とは言ったものの、喉の渇きはまだ満たされておらず、ここは正直に話した。
「あの…何か飲み物を頂いてもいいですか?」
雲雀は「ああ、」と言葉をもらしてから、木製のローテーブルに手を伸ばした。
再び帰ってきた手には、薄い飴色をしたグラスが握られていた。
いや、よく見ると飴色なのはグラスに入っている液体だ。
角張った氷が一つ浮いていて、沢山の水滴をまとったグラスはキラキラと美しく輝いていた。
雲雀はそれを躊躇なく、ぐいと口に含み、そのまま綱吉に口付けた。
「んっ……っ……」
よく冷えた液体が少しずつ注がれる。
もっと…と、雲雀の口を舌で突くと少し量を足して注いでくれた。
綱吉の喉が小気味よい音を立てて飲み干していく。
あ、この味………
思い出したその味は、雲雀がよく出してくれるそば茶だった。
とたんに口の中が芳ばしくなった。
2010.05.20
続編→飴色2