復活novel

甘い戦い
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山本は目と鼻の先にある、獄寺の唇に触れまいと、細心の注意を払う。

こんなに魅力的なシチュエーションであるにもかかわらず、寸止めを遵守しているのには、訳があった。



事は今から約十分前、山本、獄寺、綱吉が昼休みを屋上で過ごしている時に、山本が獄寺を自室に誘った事から始まる。

獄寺は十代目の前で何言ってやがると即座に却下を求めた。
綱吉の前でなくても断るくせに…と内心で悪態つく山本だが、ここで綱吉を巻き込む事で事態を180度変える計画だった。

最近、綱吉が雲雀の家で一泊したらしく、この言い争いにはかなり高い確立で自分に味方してくれると踏んだのだ。
綱吉が山本に味方して、「部屋に行くくらいいいじゃない」とでも獄寺に言ってもらえれば、彼は確実に従うだろう。

だが、その予想は見事に外れた。


「も〜、だったらこれではっきりさせなよ。」


と、取り出したのはスティック菓子の代表とも言える“ポッキー”であった。

合コンや酒宴の場でよく目にする、あのゲームで決着をつけろと言うのだ。

二人で一本のポッキーの両端をくわえ、同時に真ん中へ向かって食べ進め、先に口をはなした方が負けという極めてシンプルなルールである。

地方により、多少ルールが異なるが、ここ並盛では上記のルールに加えて、キスしてしまったらドローという決まりを採用している。
なので無闇に食べ進めてしまうと、勝敗がつかないのだ。

獄寺は、十代目である綱吉の言葉に、不本意ながら従うしかない。


「十代目がそう仰るなら…」


おもいっきりガンを飛ばしてくる恋人に気付かない振りをして、さっさとポッキーをくわえる。


「ん。」


と、ポッキーを突き出すが、恥ずかしいのかなかなかくわえようとしない。


「獄寺…逃げんのか?」


挑発してやると、鋭い眼差しをこちらに向けてから噛み付くように、先端を口に含んだ。


「準備はいい?…じゃあ、よーい、始め!」


綱吉の掛け声で、甘い戦いが幕を開ける。

先手必勝とばかりに三センチ程大きく前へ出たのは山本だった。
余裕の目付きで相変わらず獄寺を見据える。

その余裕はこの勝負に負けはない、という所からきている。
羞恥に負けて、口を離した方が敗者なのだが、そもそも恋人である獄寺に対して羞恥も何もないのだ。むしろ望む所で、このまま口付けたって構わない。

獄寺の方が幾分も分が悪いと、勝敗が始まってからやっと気付いたようで、可愛い恋人はしまったという表情を浮かべて固まった。
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