復活novel
□平行視線 Side・B
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あの修行があってから、参加したメンバーの様子がおかしい。
休み時間、いつも三人でいることが多いのだが、今は山本の姿がない。
休み時間になると、ふらりとどこかに行ってしまう。どうやら自ら避けてるようであった。
綱吉は、そんな山本が心配ではあったが、今は人の心配をする程器用になれなかった。
本日もグラウンドを眺めている。
そんな日が十日程続いている状態だ。
そして放課後、山本は野球の練習に向かい、綱吉は放送で雲雀に呼び出され、獄寺は一人になった。
呼び出された綱吉を心配して同行を求めたが、
「大丈夫だから先に帰ってて」といかにも作り笑顔でそう言われ、雲雀の待つ応接室へと向かった。
そんな綱吉の背中を見て、自分はずるいと思った。心配しているのは事実だが、相談に乗ったり、同行する余裕なんて実は持ち合わせていない。
誰もいない教室…
ふと、綱吉がいつも外を眺めているのが気になったので、その席に座ってみた。
グラウンドの隅から隅まで見渡せる。
運動部が夕焼け色に染まるグラウンドで練習に励んでいる。
かったるい授業がやっと終わったのに、更に肉体を酷使する彼らが理解できない獄寺は訝しげに嘆息する。
一際盛り上がっているのは野球部であった。
部員の掛け声と、女子の声援が校舎に反響している。
バッターは山本であった。女子の声援に笑顔で答えている。
(けっヘラヘラしやがって…)
ここの所、ずっとあの笑顔をみていない。
山本が笑うと女子の黄色い声援が更に甲高くなる。
(そういえば、あいつって結構人気あんだよな…)
山本が急に遠くに感じる。
バットを握り、振りかぶる瞬間、山本は真剣な顔つきになる。
あの顔を近くで見たことがある。
気を失った自分を抱き抱えて下山した時…
また胸が苦しくなった。
夕日を見ながら、どうしてこんなに苦しいのか考える。
……考える振りをする…。
「チッ……」
本当はもう気付いていた。彼が好きだ…。
二度目のキスは心地よかった。
(あの野球バカ…反則技使いやがって…)
狸寝入りしていた自分を棚に上げて、山本を罵る。
夕日から山本に視線を戻す…が、グラウンドには誰もいなかった。
練習はとっくに終わっていたようだ。
「あーあ、何やってんだか…」
つぶやいたその時、背後でドアが開く音がした。
窓ガラスは教室に入ってきた人物を映しだしていた。
山本だった────