復活novel
□湯煙の罠 Side・B
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獄寺はいつものように、沢田家で綱吉と休日を過ごそうと考えていたのだが、今彼の隣にいるのは山本だった。
何でこいつと肩を並べて歩かなきゃなんねーんだ!
と、喉から飛び出そうになった叫びを飲み込むのに必死だった。
事は、獄寺が沢田家を訪れた際、リボーンに綱吉が先に温泉に向かったと聞いた所から始まる。
では自分もと、準備をして綱吉の後を追っていたら山本と出くわしたのだ。
山本もリボーンからみんな温泉に向かったと聞いて、後を追っていたらしい。
(どこまでも邪魔しに来やがって…!)
そんな獄寺の気持ちは、実は山本に筒抜けだったりする。
獄寺の毒舌を毎度のことながら、のらりくらりとかわし、鈍感を演じるには訳があった。
獄寺の傍に居る為だ。彼の傍にいる為には疎ましく思われようと、それに気付かない振りをして、厚かましくも強引に獄寺、若しくは綱吉の隣に自分の立ち位置を定めておかなければならない。
要は、山本は獄寺に想いを寄せているのである。
一方の獄寺にも、山本と一緒にいたくない理由があった。
山本といるとペースが崩れるのである。十代目である綱吉の力になりたくても、いつも空回りしてしまう。そんな自分をただにこやかに見ている山本。
その暖かな眼差しは、獄寺を更に追い詰めて、結果ろくな事にならない。
こんな自分なんて見てほしくないのに、山本はただ純真無垢な笑みを浮かべて、温かく包み込んでくるようである。
それがむず痒くて嫌だ。
この妙に焦る気持ちが何なのかよく分からない。
だから、傍にいたくない。出来るだけ離れていたい。
だが、それは世間一般で言う、単なる照れの裏返しであることはまだ獄寺自身気付いていない。