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体育館倉庫
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「暗がりで愛の告白」


山本:体育教師(24)

獄寺:中2

・パロ





恋をした相手は、新任の体育教師。それも男だ。


同性とか、歳の差とか、教師と教え子とか…

いろんな問題が山積していて、とても叶いそうになかったので、せいぜい遠くから見つめるだけでよしとしていた。

恋煩いなど自分らしくもない…と、今日も体育館裏の倉庫で、本来持つべきではない嗜好品を取り出して一服しようと、ライターを探した。

が、どこかに落としたのか、どのポケットにも入っていなかった。


「あーあ……冴えねーな…」


苛立たし気に溜め息を吐き出して、かび臭いマットの上で胡坐をかき、すすけた十二段もある跳び箱にもたれた。

体育の授業が始まったらしく、グラウンドからは掛け声や雑踏に交じって、山本の威勢の良い声が響いていて、獄寺は僅かに心臓を高鳴らせた。

どうして好きになってしまったんだろう。

実際に何度も諦めようとしたのにそれが出来かったのは、禁じれば禁じる程逆に求めてしまうという、人間の不条理な心理が働いているからだと思う。

もう自分の気持ちに嘘はつけないほど山本への想いは積もっていて、また溜め息が出た。


『よし、そのままグラウンド五周な!』


生徒に指示を出して、山本はその場を離れたようだ。


「ハァ……寝ちまうか……」


移動するのも面倒だし、今日はここで半日過ごしてやろうと、目を閉じた瞬間、誰かが倉庫に入ってきた。


「んーと、ボールは…と。」


(げっ!山本!?)


山本と分かった時には既に目と目が合っていて、逃げも隠れも出来なかった。


「あ、獄寺か!?」


「なっ……………」


山本は獄寺の姿を確認するなり歩み寄ってきた。
長身で、程よく鍛え上げられた大人の身体が迫ってくるのだから、その重圧に屈してしまいそうになる。


「何でいつも俺の授業に出ないんだ?体動かすの嫌いか?……それとも、先生の事好きじゃねーか?」


恋を自覚してから極力近づかないようにしてきた。

傍にいると、何だかこの気持ちがばれてしまいそうで怖かった。


(嫌いどころか………)


好きすぎて毎日が辛いくらいなのに。


「なあ、獄寺。」


「え、うわ!!」


気付くと山本はマットに上がり、獄寺のすぐ傍で顔を覗き込んでいたものだから大いに驚き、背もたれにしていた跳び箱に背中を打ち付けてしまった。

その拍子に跳び箱の上で不安定に置いてあった籠が倒れ、入っていた大量のバスケットボールが降ってくる。


「え…?」


「獄寺、危ない!」


山本は獄寺を抱き込んで、落下するバスケットボールを背中で受けた。



やがてボールが静止して、一面に舞っていた埃が落ち着きを見せたが、獄寺は動けずにいた。

マットの上で身体を密着して抱き合っているような体勢なのだ。

ボールが突然降ってきた事なんて取るに足りない出来事のように、現状は心臓が壊れそうな程脈動している。


「だ、大丈夫か?」


山本はゆっくり顔を上げ、はたと動きを止めた。

中途半端に顔を上げたのがまずかった。獄寺と山本との唇は僅かに一センチ。

山本がふっと吐いた息が唇にかかり、獄寺はたまらずぎゅっと目をつむった。


心臓が…爆発しそうだ…


山本は、まるでキスを待っているような仕草の獄寺に対して、自然と身体が動き、そして…。

唇との距離が数ミリに差し迫ったその時。


「山本せんせー!!ボールまだぁ!?」


外からは生徒の声が。

お互い顔を見合わせてから瞬時に教師と教え子の距離を作った。


「山本先生?」


生徒が倉庫に入ろうとしたので、山本は足下に転がってあるボールを適当に掴み、生徒を押し戻すようにして外へ出ていった。


『悪い。ボールがなかなか見つからなくて。』


『って、先生、サッカーすんのにバスケットボール探してたの?』


途端に笑い声が校舎に反響した。
そんなやり取りがグラウンドから聞こえてきて、初めて獄寺は上体を起こした。

そっと唇に手を当てるが、実際には未遂に終わったので、感触を思い出す事は出来ない。


遠くで生徒がまだ騒いでいる。

山本がまたボールを取りに来るかもしれない。

獄寺は一向に冷め止まぬ胸の高鳴りに戸惑いながら、逃げるようにそっとその場を後にした。



2010.05.31



すいません…愛の告白には至りませんでしたorz

続編:保健室


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