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□保健室
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コメント
「雲雀が綱吉を介抱する」
※ちょっとHです
『僕のものになりなよ。』
頭上で夏の雨がビニール傘を打つ音がしてたし、
近隣の女学校の生徒が雨音に負けじと声を張ってたし、
トラクターと軽自動車が横を通り過ぎたし……
あの日の帰り道、雲雀さんが俺に言った言葉は何かの聞き間違えだったのではないだろうか…とも思う。
『僕のものになりなよ。』
頭の中で反芻させたが、愛の言葉にしては少々一方的と言うか、荒っぽいと言うか…
でも、雲雀さんらしいというか…
あまりに衝撃的過ぎて、返事なんて勿論出来なかった。
俺がいつまでも立ちすくんでいると、雲雀さんは傘もささないまま、やがてその場を去った。
風邪、引いてないといいな…
なんて、実は傘をさしていた俺の方が熱っぽかったりする。
あれから3日。
普段使わない頭を駆使したせいか、悩がオーバーヒートしてしまったらしい。
俗に言う知恵熱だ。
3日間ずっと雨で、あの日の出来事がついさっき起こったような心地がしている。
今は数学の授業中だが、とうの昔に置いてきぼりを食らっているので、今更熱心に耳を傾ける気は起きない。
「はぁ………」
ため息をついて無情にも校庭に降り注ぐ雨を見た。
『僕のものになりなよ。』
雲雀さん、あれから音沙汰ないな。
やっぱり何かの間違いだったのかな。
少し落胆しているのは、この3日間ですっかり頭の中を雲雀さんに占領されて、俺も少なからず心を寄せているからだ。
でも、あの雲雀さんが俺を好きだなんて到底信じられそうにない。
あぁ……視界がぐるぐるしてる。
ちょっとヤバイかな。
少し、少しだけ眠ろう…。
視界は真っ暗になったのに、雨音はいつまでも耳にこだましていた。
『綱吉……』
雲雀…さん?
今俺を呼んだんですか?
夢の中で名前を呼ばれただけなのに、心臓が跳ねて甘く鼓動している。
3日間で随分成長してしまったらしい雲雀さんへの気持ちに、俺はまだ困惑していた。
息苦しさを感じる程に。
「んっ……はっ……」
本当に息苦しいようだ。それに、口内の異物感は何だろう。
急に不安になって開眼すると、そこにはなんと雲雀さんの美顔が…
「んっ!……んんっ…」
俺は濃厚な口付けを受けている最中で、目を覚ましても尚執拗に舌を絡め取っては吸われた。
唯一酸素を取り入れられる器官で薬品の独特な香りを察知し、ここが保健室のベッドであることが分かった。
雲雀さんが唇の角度や重心を変える度にベッドが軋んで、淫らな気持ちに火が点いた。
この口付けが心地よいと感じ始めた頃、突然唇が解放されたものだから、「あっ」と少し不満げに呟いて、物足りないと訴えているような眼差しで雲雀さんを見ていた。
その様子に雲雀さんは満足そうに目を細めている。
「綱吉、返事を聞きたい。」
「……へっ…返事…ですか?」
「うん。僕のものになってくれる?」
ああ、やっぱりあれは愛の告白に部類するのか、とか冴えない頭で考えていると、シャツの前がはだけているのに気付いた。
口付けの最中にボタンを全て外されたようだ。
「えっ、ちょっと……」
「もう、答えは出てるよね?」
そう言って、さっきまでさんざん俺の口内をいいように掻き回していた舌が、胸の突起を這った。
「ぁっ…………」
小さく喘ぐとそれをよしと捉えたのか、もう片方の突起にも指を絡めてきた。
「ひ、雲雀さん……待ってください!」
雲雀さんに惹かれ始めているので身体は反応し、心も喜んでいる。でも、その一方でざわざわと不安が広がり落ち着かない。
『僕のものになりなよ。』
あの言葉の真意が未だに掴めないのだ。
「雲雀さん、…んっ……雲雀さんは俺のこと、好きなんですか?……そ、それとも、こんなことしたいだけ?…っ…」
快楽の波に揉まれながら、不安にさせている疑念を吐き出した。すると雲雀さんは少し驚いたように顔を上げて、息を荒くしている俺をしばらく見ていた。
「……君の事が好きで、こんなこともしたい。それじゃダメかい?」
「…え、えっと……ダメじゃ…ない……ですけど。」
欲しかった言葉と、回答に困る言葉を同時に告げられて、上手く答えられなかったけど、否定的でなかった俺の言葉は雲雀さんにどう聞こえたのか、制服のズボンを下着ごと抜き取られてしまった。
「わ、わぁぁっ」
冷房の利いた部屋に肌を曝されて、慌てて身体をよじるが、直ぐに双脚は左右に広げられ、雲雀さんの下半身が割って入ってきた。
流石にまずい態勢だ。
でも、どうすることも出来なくて…
「綱吉、好きだよ……」
熱に犯された思考回路なんて既に機能していなかった。
もう、なんだっていいや。
俺は全ての思索を投げ出して、流れる時と快楽に身を委ねた。
2010.09.13
文体をコロコロ変えてすいません。試験的にやってみました。
校内で風紀を乱す、風紀委員長様でした。