その他夢小説
□☆獄寺誕生日スペシャル☆
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玄関のドアを開けた時、獄寺は喜ぶよりも先に動揺した。
「…じゅ、10代目!どうしたんですか!?」
あと10分で日付が9月10日に変わろうかという時刻だった。
「獄寺くん!今日が誕生日だって、どうして言ってくれなかったの!?」
ツナは肩で息をし、顔を上気させていた。
「10代目…まさか、そのために走ってきてくれたんですか!?」
「だって…さっきリボーンに聞いて…もう日付が変わっちゃうから…」
「…すいません!オレなんかのために!」
「ううん。オレこそ何にも知らなくって……ごめん」
本当に申し訳なさそうな眼差しを向けられ、獄寺はいたたまれなくなる。
「…オレのような人間をあなたのそばに置いてもらえてるだけで幸せなんです。祝ってほしいだなんて、そんなおこがましいこと、言えませんよ」
本当だった。
誕生日に関してははろくな記憶がない。
だからもとより楽しみになどしていなかった。
今日の放課後、ツナと一緒に商店街をぶらぶらして、アイスを買い食いしながら帰った。
たわいもない会話に笑い合って…それだけで十分だった。
「獄寺くん…」
ツナは何か言いたげな顔をしたが、一度口をつぐんでから、ふっと微笑んだ。
「誕生日、おめでとう」
やわらかな口調。あたたかい眼差しに、獄寺はどうしていいのかわからなくなる。
言葉より先に涙がこぼれた。
ツナが慌てる。
「わわっ、泣かないでよ!」
「…あ、ありがとうございます。ありがとうございます…」
みっともないのを承知で、獄寺は袖で涙をぬぐい、呟くようにもらした。
困ったツナは、「あっ」と思い出したように右手にぶら下げたものを掲げる。
「ごめん…お店、コンビニぐらいしか開いてなかったから、こんなのしか用意できなかったんだけど…」
差し出されたのは、白いビニール袋に入ったケーキだ。
「10代目…」
こらえきれず、獄寺はツナを抱き寄せる。
「…あなたが来てくれたことが、オレにとって何よりのプレゼントです」
*END*