乱れし華

□わらわの宝物
1ページ/2ページ




「これ、やるよ」


孫と二人で森の中を歩いていた時、孫はふと思い出したようにわらわに何かを差し出した。


「おぉ!綺麗じゃのう!」


それは丸くてキラキラと光り、透けて向こう側が見えるガラスのようなものだった。


「ガラス玉みてぇなもんだな」
「孫、ありがとうなのじゃ!わらわはとても嬉しいぞ!!」


わらわが礼を言うと、孫は笑ってくれた。

孫の、この優しい笑みがわらわは好きだ。


再び孫が歩きだす。
わらわは孫の後を着いていく。


それにしても、このガラス玉はとても綺麗じゃ。


ガラス玉の向こうの景色がよく映る。
太陽もこんなに…。


「あっ!!」




ズシャッ


痛た…。
むむぅ、上ばかり見ていたから足元に石があったなんて知らなかったぞ…。


「大丈夫か?お嬢ちゃん」
「これくらいは平気じゃ!」


孫に心配はかけられぬ。
転んだくらいなんともないのじゃ。




…む?


「ない!」
「は?」
「孫からもらったガラス玉がない!!」


転んだ時にどこかにやってしまったのかのう…。

周りを見てもないのう…。


草むらにあるかもしれぬ。


「お、おい。お嬢ちゃん」


どこじゃ、どこじゃ…。


せっかく孫から貰ったのに…。
わらわの大事な大事な宝物…。


うぅ…。
涙が出そうじゃ。


「お嬢ちゃん。ガラス玉また買ってやるから泣くな。」
「いやじゃ…。孫がせっかくくれたのじゃ。
わらわは何としても探すぞ!」
「おいおい…」


絶対、見つけだすのじゃ!





*
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ