乱れし華

□戦の果て
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くのいちは頬を伝う汗を拭った。

目の前には、家康が倒れている。





「…幸村様。私、やったよ」


後は急いで大阪へ行きこの事を幸村に伝え、戦に加勢するだけだ。


くのいちはその場を後にしようとした、その時。


「!?」


すっと家康が起き上がった。


「愚かなり。女」
「半蔵…!」




変わり身だった…。

くのいちは再びくないを構えた。


「幸村は主が滅す。ゆえにお前もここで滅す」


淡々と喋る半蔵に、くのいちは苦笑いをする。


「さすがに甘いって?」


くのいちが喋ると同時に、半蔵が鎌を投げつけた。
半蔵の鎌が腹部を掠める。


鎌に繋がっている鎖をくのいちは掴み、それを引っ張った。


そのことにより半蔵は体制を崩し、くのいちは一気に駆け抜け半蔵の首目がけてくないを斬り付けた。


だがそれはまた変わり身だった。


いつの間にかくのいちの後ろに半蔵が立っていた。


「(ーっしまった!)」


即座に鎌を躱そうとするが距離が近かったため、再び腹部を斬り付けられる。


「っぐ!!」


真っ赤な血が腹部を伝う。
痛みを堪えながらくのいちはくないを投げつけた。


だがそれはあっさりと躱され、痛みに負けたくのいちはその場に膝をついてしまった。


「女。地獄へ落ちよ」


半蔵はくのいちの首目がけて鎌を振りかざす。

その時、くのいちはにやりと笑った。


「!!」


瞬間、くのいちが消え服だけがその場に取り残された。





「あんたが地獄に落ちなよ」


半蔵が上を向いた時にはもう遅かった。

首を斬りつけられ、血飛沫が宙を舞う。


半蔵はふらりと倒れた。


「影、不滅……」


その言葉を最後に、半蔵が動くことはなかった。


「もう私の前に出てこないでよね」


服を拾い上げ、着替えると腹部の痛みに思わず顔が歪む。

くのいちは肩膝に手をつくと、腹部から溢れだす血を見て顔をしかめた。


「(私も…もう長くないな)」


そう思うと、脳裏に幸村の姿が霞む。





『諦めるな』


そう言っているような気がして、くのいちは思わず笑った。


「幸村様、無茶してそうだなぁ。急がないと…。








幸村様…死んだらダメだよ……」





ーー私に諦めるなって言ったんだから勝手に死なないでよね。







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