†焔と鋼の懺悔室†

□見つめる先は光か闇か…
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「…。」
「……。」
閑静な住宅街にあるロイの家で、二人は無言のまま座っている。
厳密に言うならば、ロイの家の『来客用』のソファに、『二人並んで』紅茶を飲んでいた。
気まずさからロイも問い掛けれず、エド自身は先程から言葉に詰まっていた。

「…俺達の性別は大佐が知っての通り'女'で、アルと話し合って決めたんだ。」

ぽつり、ぽつりとエドは話し始めた。
初めて会ったあの時は幼なすぎてロイ自身も気付かず、二人して隠そうと言うことになった。
軍への性別偽称は危険行為。
それを可能にさせたのが大総統だった。
危険だからと性別を男に変え、口調は昔から粗かったモノをさらに粗くした。
「二次成長が始まったとき…アンタに言わなきゃって、何度も考えた。これ以上隠せなくなるから…。でも…いざ言おうとしたら怖くなって中尉に泣き付いて、俺が決心するまで秘密にしてくれるって…。」
ハラハラと零れる涙に、ロイの心が痛む。
知らないフリをしてあげていればエドは泣くことなく、屈託なく笑っていただろうか?
だが、その考えはエドの言葉で霧散した。
「…俺、もう大佐に…嘘つかなくていいんだよな?…何も見えない様な旅の中で…大佐の側なら、元の<女>の自分で居ていいんだよな?」
ほんの少し照れ臭そうに…だが初めて見せた穏やかな笑顔に、ロイはエドをその腕に抱いた。
「…あぁ、ありのままの君で居てくれ…。君の羽を休ませる止まり木になれるなら…俺は嬉しい。」
その小さな肢体を胸に抱き、ロイは一呼吸置いてエドの頬を両手で包んだ。
「…た、ぃさ?」
真剣な表情と急に変わった一人称に驚いたエドは、真っ直ぐ見詰めて来る漆黒に心臓を跳ねさせた。
「鋼の…いや、エドワード…俺は君を愛している。性別なんて関係ない。その強い心を…俺が側で感じて居たい。……だから、恋人になってくれないか?」
甘い…甘い声音に、エドの目元がうっすらと染まる。
好きな男性からの告白に、喜ばない女は居ないだろう。
「…俺普通の女の子みたいに可愛くないぞ?」
頬を包むロイの手に自らの手を添え、潤みだす金の瞳で彼を見上げた。

「エドはそのままでいいよ…。俺は君が好きだから、エドをありのまま受け止めたい。」
金色の睫毛に縁取られる目尻に、羽のような口付けを施し額同士を合わせる。

「今まで大佐が相手にしてた様な『お姉さん達』より…ガキだぜ?」
「でも誰よりも、俺の話しについて来れるだけの頭脳を持っている。」
絡まる漆黒と金色の瞳が、甘く溶け合う…。

「…好き…です。誰よりも異性として。」
「あぁ、俺もだ。」
感極まって、ロイはエドを抱き締めた。
流れる様な金糸に鼻先を埋め、その細腰を掻き抱けば折れてしまいそうで細心の注意を払った。
「君とアルフォンスが元に戻ったら……全てを俺の物にしても?」
「あぁ。望むところだ。…早く元に戻れるように頑張るから…支えててくれるか?」
耳元で囁かれたロイの言葉に、エドは無邪気に笑って答え…恥ずかしそうに頬を染めてロイの肩に顔を埋めた。
「もちろん。…ただし、『    』だからね?」
「おうっ!!」


この日を境に、二人の関係は変わった。
ただリザとアルフォンスは二人の関係を知って喜び、嬉しそうに話す姿を見受けられるようになる。
まだ先の見えぬ暗闇の中ではあるが、見つめ続ける未来は光多いことを祈り…。


.....END
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