†焔と鋼の懺悔室†
□見つめる先は光か闇か…
2ページ/3ページ
エドが肺炎にかかってから一週間たった日、ロイの元にエド本人から電話が有った。
『この前…迷惑かけたから、約束だった食事と話し…今夜でいいか?』
所謂デートの誘いに、ロイはもうスピードで仕事を終わらせ定時に上がって行った。
「中尉〜。大佐またデートっすか?」
「…本命の方から、お誘いを貰ったんですって…。」
ハボックの問いにリザは何でもないように答え、いつもより早く済まされた書類を手早く纏めて退室した。
「「「「エェッ!?」」」」
その日、東方司令部の一角で男たちの驚きの声がこだました。
「大佐〜!!こっち!こっち!!」
ロイが待ち合わせ場所の時計前に来れば、背後から知った声が聞こえ振り返り息をつめる。
「っ!?…は、がねの?」
振り返ったロイの視界に飛び込んできたのは、ジーンズ生地のロングスカートと黒のハイネックを合わせたエドだった。
「…今日は銘で呼ぶの無しな?こんな格好でバレたら困るんだ。」
無邪気に笑う彼女に、ロイはほんの少し罪悪感を持ってしまう。
事故だとしても、『知られたく無かった秘密』を知ってしまった事に…。
彼女から打ち明けられるまで知らぬフリをすることも出来たクセに、自己満足からしなかった事へ…。
「大佐?…とりあえず飯行くんだろ?」
「っ!?ぁ、あぁ。行こうかエド?」
そう言ってロイはエドの腰に腕をまわし、街道を歩き出した。
視線をエドから離したロイは知らなかったが、顔を紅く染めたエドが居た事に…。
「うわぁ…何これ、スゲェ美味い。」
「……エド、せめて言葉遣いを何とかしなさい。」
食事を始めて気付いたが、マナーを守って食べていたエドの言葉遣いが、いつも通りでロイはハラハラした。
誰が見ているか分からないこの街で、エドの姿は男達の目を引き付けていた。
流れる金糸は月と太陽を混ぜた色…。
瞳はまるで上質のイエロージェイドで、しなやかな身体のラインに溜め息がでる。
健康的な肌の色は殆ど服で隠されていたが、それさえエドを引き立てた。
男なら一度は散らしてしまいたいと思うだろう、思春期の少女から女性へと成長する独特の色気が理性を食い破ろうとしている。
暗い過去の記憶である鋼の義手さえ、エドの美しさには霞んで見えた。
「う〜ん!美味かったっ!!」
食事も終わり、店を出れば冬の風がエドの髪をさらった。
「…鋼の、約束だ。…話してくれるか…?」
ロイの漆黒の瞳がエドを貫いた。
その眼光にエドは切な気に眉を寄せた。
「…此処じゃだめだ。…宿もアルが居る、誰も居ない所が良いんだ…。」
真剣な眼差しにロイは固唾を呑む。
金の双眸…。
風に舞う金糸…。
「……私の家に行こう。」
気付けば、エドを自宅へと誘っていた。