*黒と灰の聖歌*

□〜暁の唄〜
4ページ/15ページ

「…アレン。お前の両親って…稲荷神と人間なのか?」
朝餉をとっていた神田は、アレンを見遣り口を開いた。
狐の姿をしている事から稲荷神の縁者なのだろうが、神気が薄いアレンに…薄々感じていた事を言った。
ビクッと肩を揺らし怯えた瞳を向けるアレンだが、神田はまたその髪を掻き混ぜた。
「清明も狐の子だと言われてずっと一人だったからな…。俺にはそんなの関係無かったから気にもしちゃいねぇ。アレンが稲荷と人間の合いの子だろうと、アレンにはかわらねぇだろ?」
あまり口は上手くねぇんだ…と言う神田にアレンは頬を朱に染めた。
ドキドキと鼓動が高鳴り、顔に血が集中する様な感覚。
神田が触れた髪一筋さえ熱を持った様に熱い。
稲荷神である父親譲りの白髪と銀灰の瞳、父親を奉る社の巫であった母親譲りの顔立ち…。
神の血を色濃く遷した…左手。
母親の見鬼の左目。
容姿は稲荷神に近いのに力が弱く隠形すらままならないアレンにとっては、社の本殿以外の世界は侮蔑・軽蔑・畏怖・差別そんなものしか存在しない世界だった。
そんな世界を一瞬で、神田は光りある世界へと変えてしまった。


そして、父が母へ向けた'特別な愛'をも知ってしまった。

「…ン。…レン?アレン!」
「っはい!?」
真っ赤なままの頬で振り返ったアレンに、神田は溜め息を漏らす。
「てめぇ…俺の話しを聞いちゃ居なかったな?」
「ぁ…あぅ。」
「…はぁ。…気になったんだが…お前、俺に'真名'を教えたんじゃねぇよな?」
名前は一番短い『呪』だ…神の子だからそのあたりは大丈夫だとは思う…。いや思いたい。
「…え?何言ってるんです神田。本名を名乗らなくてどうするんです?」
キョトン…と小首を傾げるアレンに、神田は眩暈がおきた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ