*黒と灰の聖歌*

□〜暁の唄〜
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そして神田に向けられた瞳の色と、その容姿に思わず息を飲んだ。
仰ぎ見た瞳は、星を散らしたような銀灰色。
肌も白く、まるで少女のようだった。
「…ぁ、僕が気持ち悪く無いんですか?」
今まで驚愕していた狐(仮)の少年が、神田に向けて放った言葉に眉根を寄せた。
「僕…人間とも妖とも違うし、この手と容姿のせいで仲間外れにされてたから…。」
怯えるように紡がれた言葉に、神田は首を横に振った。
「…何がそんなに気味悪いんだ?俺は陰陽師だからもっと醜悪な化け物を見たこともある。……それにお前は妖じゃなくて、神の血縁なんじゃないか?僅かながらに神気を感じるぞ?」
一目見た時からこの白い少年に心惹かれた。この少年の全てが欲しいと願う程に…。
スッ…と頬の裂傷に指を這わせれば、少年は目を見開いて途端に綻ぶ様な笑顔を見せた。
「ぁの…僕はアレンって言います!!貴方の事は神田で良いですか?」
「あぁ。好きに呼べ。」
フワリフワリと左右に揺れる尻尾と大きな瞳に、神田はクシャリと頭を撫でてついて来るように言った。




神田の邸は二条にあり、朱雀大路より少し西へと入り込んだ辺りに在った。
「ここが神田の邸ですか?」
目立つ風貌を隠す為、神田の術で姿を隠したアレンは目の前にそびえ立つ門に頬を引き攣らせた。
門を潜り屋敷へ上がったアレンは、神田に術を解いてもらった。
「あぁ。この邸には俺以外住んでねぇ。…たまに腐れ縁の清明が来る位だ。」
「清…明って、あの安倍清明ですか!?」
ピーンと耳と尻尾を立たせ肩を強張らせた。
まるで怯える様に…いや、実際怯えていたのだ。
「…大丈夫だ。清明は、むやみやたらに調伏するような陰陽師じゃねぇ。」
安心させたくてまた一つ、アレンを撫でる。
安心したように体から力が抜け、大きな尻尾がフワリと揺れた。
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