*黒と灰の聖歌*

□SNOW DROP
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銀灰色の瞳から溢れる涙と、必死で抑えている嗚咽が分かってしまったからだ。
「…チッ。あの監査野郎…黙認してやがるな…?」
「…はい。…もぅ、僕…どうしたらいいのぉ…!」
ついに泣きはじめたアレンを、神田はその腕に抱きしめた。
「っ!?…か…んだ?」
「モヤシ…、俺の女になれ。」
「…え?」
スルリと…先程自覚したばかりの想いが、言葉を紡がせた。
「…コムイにも、極力同じ任務に就かせて貰えばいい。…教団の中に居る間は俺から、居なけりゃリナリーか糞兎から離れるな。」
監査野郎は信用できない。
そう言えば、アレンは神田の肩に顔を埋めた。
「…駄目です…神田。…それじゃあ貴方を利用するみたいで、貴方に悪いです。」
「利用すればいい。俺はお前が欲しい。お前はいつ襲われるか解らない生活から、おさらば出来る。さぁ…どうする?アレン。」
卑怯だと分かっていた。
アレンの弱っている所につけ込んで、アレンの全てを奪うのだから…。
その白い肌も、白銀の髪も、養父から受けた呪いも、神に愛された左腕も、全てを愛したかったから…。
自分の想いさえ利用させて他者から護れるならば、喜んで利用されてやる。

だから…。

「…俺を選べ…アレン。」


彼の言葉にアレンは胸が熱くなった。
ずっと想いを寄せていた青年からの、思わぬ告白。
誰にも相談出来なかった事がバレた時、怖かった。

軽蔑される。

そう思ったから、神田が抱きしめてくれた事に言い知れぬ喜びを感じた。
「側に…居てくれますか?」
「あぁ。」
口から出た言葉に、神田は即答してくれた。

「僕を…大切にしてくれますか?」
「あぁ!!」
アレンの言葉に、神田は抱きしめる腕を強くした。

「僕も…神田が…好きなんですっ…だから貴方を大切にしたいんです!!」
「俺もお前が愛しい。」
紡がれた言葉に泣きそうになる。
それと同時に施された深いキスに酔いしれ、一筋の涙が溢れた。
あぁ、辛い思いばかりじゃ無かった。
そう思える事に、アレンは自然と笑顔になった。
「…アレン…絶対護ってやる。」
「はい、神田。」
「一先ず、コムイん所行くぞ。お前の事も話さねぇと…。」
「は…ぃ。」
トクトクと鳴り響く心音に、背を流れる冷や汗。
嫌な感覚がアレンを支配し、自然と体が震える。
「大丈夫だ。俺がいる。」
気付いたのか神田が放ったその言葉だけで、アレンは強くなれる気がした。



「……って訳で、俺とコイツを同じ任務に就けてくれないか?」
「分かったよ。…しかしアレン君。そういう事は言ってくれなきゃ困るよぉ。とりあえず今夜は神田君の部屋に居た方がいいね。」
全てをコムイに話し、任務の件も了解を取れば安心したアレンの顔がうかがえた。
「はい。…あの、コムイさん。」
「ん?何だい?」
「僕の部屋…神田の部屋の近くにして貰えませんか?」
ほんの少しの我が儘さえ、アレンにとっては気が引ける。
真っ赤に顔を染め、気恥ずかしそうにするアレンの肩を神田は抱き込んだ。
「ふふふ…神田君。確か君の右隣りの部屋が空いてたね?」
アレン君の部屋はそこだから引っ越し、手伝ってあげなさい。と言ったコムイに礼を言い、神田とアレンは室長室を後にした。
 
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