*黒と灰の聖歌*

□☆VAMPIRE NIGHT☆
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何処からか血の臭いがする…。
「…ティム。行こう。」
白く長い髪を揺らし、少女はビック・ベンから街の闇へと消えた。

 ☆VAMPIRE NIGHT☆

「…見付けましたよ神田…いえ、人の生き血を啜るバンパイア。」
暗く霧が立ち込めるロンドンの路地裏で、白と黒の対極の人物が対峙している。
「……ハンターになったか、モヤシ。」
「モヤシじゃありません。アレンです。…もう、やめてください。貴方の乾きは一般人では治まらないでしょう!?なんで「お前が俺に血を与えれば考えてやる。…俺はお前の…ダムピール(半吸血鬼)の血以外は飲めないからな。」
飄々とのたまう漆黒の吸血鬼…神田に、純白のハンター…アレンは唇を噛み締める。
ダムピール…半吸血鬼として生を受け、初めて純血の吸血鬼の神田に出逢った時…アレンは神田に純潔と血を奪われた。
「お前の体も、心も…俺の物だろう?」
純血の吸血鬼の拘束力は強い。
その者が全ての吸血鬼を束ねる『始祖』ならば、なおのこと力は強まる。
ダムピールと言えどその拘束力は働く筈なのに、アレンは始祖である神田を睨みつけていた。
「貴方には付き合いきれません。貴方が欲しいのは、僕の『血』であって『心』なんかじゃない。…僕は貴方の言葉なんて…二度と信じない。」
アレンの左手と左目に変化が現れる。
左手は鈎爪のように鋭くなり左目は…まるで血を集めたように、銀灰色から深紅へと変わった。
「なっ!?」
「…血塗れの御霊に天の裁きを。」
神田は変化したアレンの手と目に驚愕し、目を見開いて後ろへ大きく跳躍した。

  −ドォンッ!!−

大きな破壊音と瓦礫が宙を舞い、神田が先程まで立っていた場所は悲惨な状態へと変わっていた。
「…てめぇ、『神の結晶』を埋め込まれたかっ!?ソイツは「神田には関係ありません。僕が死のうが、神の裁きを受けようが…僕達を見捨てた貴方になんてっ!!」
アレンはまた、左手を神田に向かって振りかぶる。
神田は一つ舌打ちをして闇へと消えた。

『モヤシ、てめぇが何を勘違いしたか知らねぇが…俺はお前を裏切ってない。お前に埋め込まれた『神の結晶』…絶対に破壊するからな…』

神田の言葉が、夜霧の立ち込める路地裏に響き気配が完全に途切れた。
それを確認し、アレンは発動を解き拳を握りしめる。
「逃げましたね。…マナを殺した貴方を…絶対に許さない。」
アレンの呟きを聞いたのは上弦の月とアレンのゴーレム…ティムキャンピーだけだった。



「リナリーっ!!ラビっ!!居るかっ!?」
次元の狭間…闇の種族であるバンパイアが集まり、暮らしを共にする居城に神田は戻ってきた。
この居城に神田が帰ったのは、アレンが一族から姿を消した時以来だ。
昔馴染みの二人を呼び、苛立ちをあらわにソファーに身を預けた。
「神田っ!?久しぶりじゃないっ!!お帰りなさい!」
「ユウ!!久しぶりさぁ〜。どうした?浮かない顔して。」
 
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