*黒と灰の聖歌*

□GRANDCROSS
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ここは暗い牢獄…。

罪を犯し、刑に服す者が集まる場所だ。

アレン・ウォーカーは所長のクロス・マリアンに呼び出され、所長室にやって来ていた。
「馬鹿弟子。お前しばらく、この囚人担当しろ。」
ハラ…と一枚の紙がアレンに突きつけられ、アレンは眉をしかめる。
「囚人109…神田ユウ。罪状は傷害罪…。相変わらずルベリエ検察官はエグイやり方をしますね…、この状態なら執行猶予が付きますのに…。」
『現場状況…喧嘩の仲裁中に誤って一人の腕を脱臼させ、駆けつけた警察官に取り押さえられた。』と有る。
「だからだよ…。ほぼ事故にこの刑は重過ぎる。いまティエドールが証拠集め中なんだとよ。…とりあえずお前に任せたからな。」
面倒くさそうにタバコをふかす上官にため息をつき、アレンは資料片手に問題の独房に向かった。


「…貴方が囚人109・神田ユウですか?」
神田の独房は、他の囚人達が居る場所から離れた所にあった。
他と違う点としては調度品のランクだろう。
「えぇ〜と、神田さんでいいか。簡潔に言えば、貴方はルベリエ検察官に嵌められました。貴方の行動は罪状として、は執行猶予が与えられるはずなのに此処に容れられるのはおかしいんですよ。」
手元のボードを見ながら、アレンは神田の居る独房の鍵を開け中に入る。
「おいっ!!看守が簡単に、囚人の独房に入って良いのかよ…。」
始めて合わされた視線に、アレンは鼓動が高鳴った。
漆黒の、宝石の様な瞳…。
『あぁ、なんて綺麗なんだろう…。』
こんな澄んだ漆黒を持つ彼が、理由無く他人を傷つける訳が無いとアレンの直感が訴えた。
「…お…まえ、」
神田が口ごもったのは、きっと自分の額から頬にかかって有る傷。
その様子にアレンは苦笑した。
「傷…気になりますか?」
「……女がそんなでけぇ傷「待って下さい!僕は男ですよ?」
神田が罰が悪そうに視線をそらし、かけようとした言葉にアレンが反論する。
その場の空気が凍り付いた。

「…わ…悪かった。」
先に口を開いたのは以外にも神田。
「…いぇ。今だに良く言われるんです。」
グッ…と拳を握りこんだアレンに、神田は慌ててその手を掴んだ。
「神田さん?」
「…傷になる。そんなに強く握るな…。」
ぶっきらぼうな言葉と揺れた漆黒に、アレンは顔に血が集まるのを感じた。
「ぁ…ぁの、神田さん…。」
心臓が高鳴り、息苦しい。
あぁ、あの瞳はまるで魔性の様だ…。そう思考の端で捉えたアレンの視界は、黒一色に染まった。


「…ぃ!ぉ…!!こらっ!モヤシっ!!」
神田の焦った様な声に、アレンは自分の意識が浮上したことを悟った。
「ぁれ?僕…?」
「…はぁ。…どうやったら、壁に頭ぶつけて気絶すんだよ。」
呆れた様な溜め息の中に安堵の色と、ほんの少しの罪悪感が現れていた。
「…すみません、実は丸二日寝てないんですよ。」
あのナマグサ所長のせいで…。
そう言ったアレンの後ろに何故か黒いモノが見え、神田はヒクリと頬を引き攣らせた。

 
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