*黒と灰の聖歌*

□SNOW DROP
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イライラする…。

あの白くて、甘い事ばかり吐かしやがる女のせいだ。

神田ユウがイライラと教団の廊下を歩く中、彼の思考を占領するアレン・ウォーカーが飛び出してきた。
「っ!?テメェ、糞モヤシ…?」
「ぅっ!?ゃ…ぁっ!!」
自分の腕の中に飛び込んできたアレンの格好に、驚き目を見開いた。
破れた団服からボタンが二、三個飛んだワイシャツが見えたのだ。
「…お前…誰に…。」
「か…んだ?…ャっ!!助け「こっちだ!!」
男の声と複数の足音が聞こえ、アレンが腕の中で怯える様に服にしがみついてきた。
「っ!?神田殿、ウォーカー殿をこちらへ…。」
角から飛び出してきたのは、数人のファインダー達。
「…テメェ等…コイツに何した?」
フッ…と思った事が口から紡がれ、自分でも驚くほど低い声でファインダー達を威圧していた。
「い…いえ、ただ用があって。」
しどろもどろと話すファインダーを横目に、神田はアレンの肩に手を廻し踵をかえす。
「大した用じゃなけりゃ連れていく。ちょうど鍛練をする予定だったから手合わせ出来るしな。」
そう言うと神田とアレンは廊下の闇に紛れた。



「神田、ぁ…ありがとうございました。」
やって来たのはアレンの部屋…。
中央の監査官が居ない為、アレンが入れた紅茶を啜る。
「で?確認するが…、テメェ強姦されそうになってたんじゃねぇか?」
ビクリと揺れる肩に、また一つ苛立ちが募った。
「一応未遂ですし…今回が初めてじゃありませんから…。」
「はぁ!?初めてじゃねぇ!?テメェ、何でコムイとかに言わねぇんだ!?」
思わず怒鳴れば、アレンの顔に影が落ち全身が震え出した。
「神ノ道化で回避出来ますし…男の人にこんな事…言えませんよ…。」
泣きそうな声。
震える肩を抱きしめ、必死に自分を護ろうとしている。
「……いつからだ?」
知っても意味を持つか解らないのに、神田はアレンに聞いていた。
気に食わなかった筈の少女が、弱って居たからかも知れない…。
だが今、対面して話すアレンに苛立ちや嫌悪感は無いのだ。
素直に護りたい…そう思えるほど、目の前の少女に心奪われて居たのだ。

『…俺は…モヤシが好きだったのか?』

そう考えれば、アレンに対する苛立ちも解る気がした。
誰かの為に、自分を犠牲にするような戦い方…。
自分以外に向けられる笑顔。
任務の度に怪我をするアレンに、『弱いくせに』と思った事もある…。
「…僕がノアの関係者だと分かってから…ずっとです。」
「…そ…そんな前から!?テメェ何で…。」
危うく自分の考えに耽っていて、アレンの答えを聞き逃すところだった。
誰にも相談しなかった事に苛立ち怒鳴ろうとしたが、神田は怒鳴る事をやめた。

 
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