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□ハイタッチ
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「……ったく。どこのどいつだ?こんなに客を招待したやつは?」
ユーリは剣を鞘から抜いた。
「さぁ?誰だろうね?」
「あたしはアンタのせいだと思ってるんだけど。アンタなんかついてるし」
カロルとリタも武器を構えた。
「俺はエスコート出来ない客は呼ばないタチなんだかな」
ユーリ達は次の街に向かう途中、魔物の群れに遭遇してしまっていた。
「嬢ちゃん!援護頼むわ!!」
「分かりました!!」
「いくぜ!爪龍連牙!!」
「ファイアーボール!!」
「聖なる活力、ここへ…ファーストエイド!」
大量にいた魔物達が次々と倒されていく。
「これで……終わりだ!!」
一匹残らず倒した……と思い込んでいた。
「やりましたね!ユーリ!!勝利の合図、いきます!!」
くるっとユーリに振り向いたエステルだが、突然、背後に影が現れた。
「エステル!!」
「え……?」
敵から攻撃を受けたエステルを休ませるため、急いで街に向かったユーリ達は真っ先に宿屋にエステルを寝かせ、医者を呼んだ。
結果は…毒におかされていた。
パナシーアボトルを使い、なんとかエステルは落ち着きを取り戻してきた。
しかし完全に毒が抜けきれていないので、今日1日は安静に、ということだ。
「とりあえず嬢ちゃんを休ませてあげないとな。おっさん達は外にでてようぜ」
レイヴンはリタとカロルとラピードをつれて外へ出ていった。
「あなたは?」
ジュディスはユーリに話しかけた。
「あなたは一緒に行かないのかしら」
「あ…?あぁ……」
チラっとエステルを見た。もともとの白い肌がもっと白くなり、とても辛そうだった。
「……責任を感じているのでしょう?自分が1番近くにいたのに守れなかった事に」
ジュディスに問われ、一瞬の間が出来た。
「……フレンにエステル頼むって言われてたからな」
「……本当にそれだけ?」
その言葉にユーリは黙ってしまった。
「あなた、今日はエステルのそばにいてあげて。目が覚めた時にエステルきっと喜ぶわ」
ユーリの返事を聞かずに、ジュディスは部屋の外へ出ていった。
(……くそっ!)
ユーリは力一杯壁を殴った。
ジュディスが言った事は見事に自分の図星をつかれていた。
守れなかった。自分でエステルを守ると、親友の分も俺が守ってやるって決めたのに。
壁を殴った拳に力を込めた。血が滲み出ていたが、今はそんな事はまったく気にならなかった。
「聖なる…活力…ここ…へ……ファースト、エイド!」
ユーリの拳から血の滲みが消えた。
「エステル!!」
「ダメ、ですよ?ユーリ…そんな手では、ハイタッチ…出来なく、なります…」
「エステル…俺のせいで…」
「どうしてユーリのせいに…なるんですか…?あれは私が、油断し過ぎていた…だけです…。よっぽど浮かれてた、んでしょうね…私、ユーリとハイタッチするの、すごく好き、なんですよ…」
エステルは苦しそうに、だけどうっすらと笑いながら言った。
ユーリは一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに微笑む。
「……それじゃ、さっきのがまだだったな。」
エステルは小さく頷いた。
「勝利の…合…図、行きます」
「……ほい」
いつもみたいに元気なハイタッチじゃないけど、エステルとユーリの手はしっかり重なっていた―――。
「良かったね!エステル!!元気になって!!」
「ホントよ……。あんま心配……かけんじゃないわよ!」
「カロル、リタ、それに皆さんも。ご心配お掛けしました」
ペコリと、エステルはみんなに頭を下げた。
「ユーリも。本当にありがとうございました!」
「……俺は何もしてねぇがな。」
「いいえ。私にとっては十分です。」
エステルは笑った。
「なになに〜?意味深な会話しちゃってさぁ〜!おっさんも混ぜてくんなぁい?おっさん、2人の為に気ぃつか……」
ゲシッ
「ちょっと!いきなり蹴るなんて酷いじゃないのよ青年〜!!」
「さ、次の街に行こうぜ」
「あ、無視。ちょっと!おっさん置いてくなよー!!」
叫びながらレイヴンは走り出した。
「行くぞ!エステル!!」
「みんな!待ってくださーい!!」
また今日もハイタッチが出来るんだ。
そんな事を考えながら今日の旅に胸を踊らせていた。
Fin
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戦闘後のエステルのハイタッチが好きです(●^^●)
↑いきなり!?
というよりエステルが好きです(^^)
みなさんどうでしたか?
もしでしたら、感想を頂けると嬉しい限りです!
では☆