shake用

□先生と僕
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応接室が僕の居城。



あの日だってただの気紛れで出ただけ。



チラリと教員名簿に目を通す。



そこに書かれているのは名前だけ。



有り得ない採用に多少の興味を持ったから。



ふぅ、と息を吐き出した時、凄まじい音と共に扉が開いた。



「雲雀!てめぇ、片付け手伝えって言っただろが!」



「ノックぐらいしたら?仮にも教師でしょ。」



勢い良く飛び込んできた人物は、僕の言葉に一瞬顔を歪めた。



「……どうせ、仮だよ。」



その小さな声は距離がありすぎて良く聞こえなかった。



「おら、行くぞ!…ったく、てめぇ捜すのにどれだけ掛かったと思ってやがる。」



「僕、忙しいんだけど。」



「知るか!ほら、行くぞ。」



僕の返事を聞かずに背を向けた彼に溜め息を洩らす。



こんな人物は初めてだ。



まさかこの僕に命令をするなんて。



面白い…一度、痛い目に合わせてあげる。



そしたら、君は諦める?



他の奴らみたいに。



その強気な態度を崩すのも面白い。



こっそり口端を上げ音楽室へ向かった。






開いた扉から入れば、彼は嬉しそうに笑った。



その笑顔があまりに綺麗だったから、僕はトンファーを取り出した。



「君が勝ったら、手伝ってあげる。」



その言葉に見開かれた翡翠の瞳。



しかしそれは直ぐに笑みに変わった。



「いいぜ。その代わり、てめぇが負けたら一生手伝えよ?」



ニヤリ、と。本当に楽しそうな笑みに胸が高鳴った。



初めてだった。



こんなに胸が高揚したのは。



早く早くと急かす声が脳に響く。



グッと足に力を込め一瞬で間合いを詰めた。



間近で見た彼の笑顔は、多分一生忘れない。



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