宝物

□痴話喧嘩は犬も食わぬ
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家に帰ると皆買い物にでも行ったのか誰もいない。




「お邪魔します!」



「誰もいないからそんなに畏まらなくていいよ〜。」



なんて獄寺くんに声を掛けながら自室のドアを開いた俺は再び閉じた。



「どうしたんですか、十代目?」



「ううん!何でもない!」



目の錯覚だと思いたい。



そんな事を考えていたら何故か内側から扉が開いた。



「君、僕の隼人と二人きりになって何する気?」



やっぱり居た〜!何で此処に居るんですか?それになんか凄い勘違いしてるし!



「雲雀!お、お前のって…十代目の前で恥ずかしい事言ってんじゃねぇよ!」



突っ込むとこそこ!?顔赤らめて何言っちゃってるのこの子は!貴方のボスが今まさに咬み殺されそうなんだけど!



「雲雀さん!ただ獄寺くんのシャープを探すだけですから!」



「……シャープ?」



頭が取れるくらい頷けば何か考えた後獄寺くんに近付いた。



「へぇ、探してるんだ。」



「…悪ぃかよ。」



「全然。…嬉しいよ。」



「…雲雀。」



…あの、何ですかこのピンクな雰囲気は。俺の存在丸無視ですか?



「あの、獄寺くん…探そうか。」



「あっ!すみません、さがしましょう!」



雲雀さんの視線が凄く痛い…でもあのままだと見たくもないものを見てしまいそうな気がして勇気を最大限に振り絞って声を掛けた。






「ん〜、無いですね…。」



床を這いつくばる俺と獄寺くん。何故か優雅にベッドに腰掛ける雲雀さん。



そうですよね、貴方が這いつくばる姿なんて想像出来ません。



「あっ!」



「どうしたの、獄寺くん?」



「そう言えば途中でアホ牛が来て…もしかしたら机の裏とか…。」



そう言えばあの時ランボが来てめちゃくちゃになったっけ。



「後ろ見えないっスね…これ、動かしていいですか?」



「うん、いいよ。」



その時、初めて彼が動いた。



「隼人…君にそんな重い物持たせられないよ。」



「これくらい楽勝だって。」



「君に箸より重い物を持たせる訳にはいかないよ。君は下がってて。」



どう考えても箸よりダイナマイトの方が重いですよね?



そして可愛い恋人の為に自ら動く雲雀さん。あ、なんか嫌な予感。



バキッ



「ちょっ!何してるんですか!?」



やはりと言うかなんというか、机は原型をなくし後ろが見やすくなっていた。



「此処にはないね。」



「あ、そう言えばリビングにも行きましたよね?」



え?机はスルーですか!?これだから金持ちは嫌なんだよ…。



呆然と机を眺める俺を無視し居間へと移動する二人。



直後下から嫌な音が聞こえてきた。



あぁ…行きたくない。



仕方なく一階へ下りるとそこはまるで強盗に入られた様な散らかり具合。



「…ねぇな。」



「ねぇ、本当に此処なの?」



シャープ一本の為に何か色んな物を失った様な気がしてきた。



「あ、そう言えば…。」



お願いだからこれ以上被害を増やさないで!



「俺…失くすと困ると思って、大切にしまっておいたんだった。」



………は?



「君はホントおっちょこちょいだね。」



甘い笑顔でデコピンをした雲雀さん。あんた誰ですか?



「悪ぃ、雲雀…。」



「ううん…今から君の家に確認しに行こうか。」



「…確認するだけだからな。」



「何を期待してるの?」



「べ、別に俺は!」



「クスッ…行こうか。」



「………おぅ。」



何なんだこの展開は。



ベランダから出ていこうとする二人。





多分、今この二人にイクスバーナーをぶっ放しても誰も俺を責める事はしないだろう。







そんな二人に一言だけ言いたい。



痴話喧嘩に他人を巻き込まないでくれ!



END―――
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