宝物

□俺事情
1ページ/6ページ



「果てろ!」



放ったダイナマイトは地面に落ちる前に導火線が切断された。



「分かりやす過ぎ。本当に君は真っ直ぐだね。」



「クソッ!まだだ!」



「君と遊ぶのもいいけど…今日はもう時間でしょ?」



教会の鐘が鳴り響き、悔しさに顔を歪めた。



「またおいで、僕は逃げないから。」



「次はぜってぇ果たす!」



ダイナマイトを突き付け踵を返した。



城下町を後にし城へと足を踏み入れる。



「お帰りなさいませ、隼人様。」



頭を垂れる家来達。



しかしそれは形だけ。



皆心の中では俺を蔑んでいる。



側室の子のくせに、と。



居心地の悪いこの城が大嫌いだった。



此処には俺の居場所はない。



だが、俺は何処にも行けない。



外にも居場所なんてないから。



皆、王子としてまるで腫れ物を扱う様な目で見るから。



でも、彼奴は違った。



城下町を一手に仕切る男、雲雀恭弥。



奴は、奴だけは俺を特別扱いしない。



それどころか、本気で手合わせしてくれる。



俺に傷を付ける事を躊躇わない。



そんな彼奴は俺にとって特別な存在だった。






「今日はお前にぎゃふんと言わせてやる!」



「なにそれ?なんならいくらでも言ってあげるけど?」



「く〜っ!ぜってぇ、果たす!」



三十二敗零勝。



今日もまた、連敗記録を更新するのであった。



「こんなに細いから、筋肉がつかないんだよ。」



「ぅひゃ!何処触ってやがる!」



「感度良すぎ…君さ、もっと危機感持ちなよ。」



「は?」



溜め息を吐く雲雀に首を傾げた。



雲雀といると楽しくて、つい時間を忘れてしまう。



遠くに聞こえる鐘の音に顔を顰めた。



.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ