紫の砂

□欠けた心
3ページ/46ページ


静かになった部屋でイザークが、何も言わずに飲み水を渡す。
相変わらずの不器用さにニコルは苦笑すると水を飲むために起きようとするキラの体を支えた。

そんなニコルに「ありがとう」と言うことを忘れずキラは、体を起こし水を喉に通す。

「キラ、目が覚めて良かったです。体は大丈夫ですか?」

「うん、もう大丈夫。」

ニコルに笑顔を返すキラ。
その様子に壁に寄りかかって居たイザークもホッと息を吐く。

「病み上がりなんだ、ゆっくり休むことだ。後で、悪化してもこっちが迷惑だからな」

そう言って部屋を出て行った、イザークは本当は心配しているのだが一言多い。

イザークの後を追うように、ニコルも「ゆっくり休んで下さい」と言うと医務室を後にした。

だから、2人は気づけなかった…
キラの顔から表情が消えていた事に…
普段なら強い意志に輝いている深い紫色が陰っていた事に…



 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ