フォレスト - 忘れられた記憶 -

□第3章 旅立ち
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「おじいちゃん、いったい何が起こっているのかしら?」
クリアは大変な有り様になったテーブルと床、自分の足を拭き始めた。
「わしは大臣と魔導士という組み合わせが、気になるんじゃよ。王様は知っておるんじゃろうか」
長老は昔を思い返すかの様に遠くを見つめた。
「おじいちゃん?」
「ん?実は今の王様が小さい頃にな、わしは教育係ってやつをやっておっての。わしは魔法力や世界樹の事も教えたんじゃ。悪しき心で使うと恐ろしい事が起きるとな。王様もそれはようわかってくれてな。いつも民の事を考えてくれておったんじゃが…」

しばらくして長老はクリアの目を見て言った。
「時は迫っておる。あまり旅立ちまで時間はないぞ」
クリアは悲しげに目を伏せた。
「大丈夫じゃ。心配することはない。お前は不思議な力に護られておる。きっと助けてくれる者が現れる」
力強く長老は頷いた。
「おじいちゃん、私が心配してるのは、おじいちゃんと村の人達だよ。
恐い人達が来てみんなに何かあったら…」
ほほと長老は笑った。
「そんな事か。大丈夫じゃ。村のみんなもワシも何も知らん。
古文書も地図もお前に託すからの。
大臣と軍の目的は世界樹なんじゃ。
ワシはお前の方が大変じゃと思うとる。」
クリアの大きな目から涙が溢れた。
「よしよしクリア、お前の帰って来る場所はここじゃ。
忘れるんじゃないぞ」
長老は優しくクリアを抱きしめた。
「うん。おじいちゃんそれまで元気でいてね」
「大丈夫じゃ。村のみんなも待っておるからの」


クリアは自分の部屋で旅支度の袋に入れた古文書を開いた。
(この本がそんなに特別なものなの?)
クリアが古文書を読み始めた頃、村の広場にある井戸に村人達が集まっていた。
「クリアが国の外に出るまで、何とか大臣達を足止めせんとな」
村人達はクリアを守る為に話し合いを続けた。
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