フォレスト - 忘れられた記憶 -

□二章 せまる影
3ページ/3ページ

V

「この黒い霧のような気は魔王?」
「いや、わからん。わからんが何か悪しき物には間違いなかろう」
長老は深いため息をつくと何かを取り出した。
「古地図じゃ。この古文書と共に伝わっておる」
長老は茶色に変色した紙を広げた。
「ここが、わしらの住んどる村じゃと思う」
指差した所には森しか書かれていない。しかし森の東には湖があり、森の中には泉のある洞窟も書かれていた。
「これ、ずいぶん昔の地図みたいだね」
クリアは地図の中に、ほとんど町や城などがなく森がとても多いのに驚いた。
「そうじゃの。ほれここを見てごらん」
そこは周りを高い山に囲まれた広大な森が広がっていた。
その中央には世界樹の木と記されている。
「ここに世界樹が?」
「うむ。この村の世界樹の木は親木から挿し木されたものらしい。
この親木はクリア、お前の故郷かもしれんのう」
長老はそう言って大切そうに古地図をたたんで古文書に挟み込んだ。
夜も更けて来た。
長老は窓から外を見上げた。
満天の星空。中空には月がかかっていた。
「クリア見てごらん。きれいな空じゃな。この景色はもう何百年も変わらん。山も川もな。
あの地図は古い物じゃが今は忘れ去られた土地も載っておる。きっとお前の役に立つ。そう思うての」
クリアは長老の横に並び一緒に夜空を眺めた。
一つ流れ星が流れた。
「クリア何か願い事をしたかね」
クリアは頷いた。でも口にはしなかった。口にしたら願いは叶わなくなる…
そんな気がして。
クリアの願いは…
(この村が、いつまでもこのままでありますように。そして私がこの村に戻って暮らせますように)
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ