フォレスト - 忘れられた記憶 -

□二章 せまる影
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今日の夕食はクリア特製のシチューとオムレツ。
「うーん、いい匂いじゃ」
長老は、分厚い本を閉じると鼻をヒクヒクさせた。


「クリア、パン焼いたら貰っておくれ」
隣のマーサおばさんがやって来た。
木の実がたっぷり入ったベーグルが、山程かごに入っていた。
「マーサありがとう。」
クリアはお返しに自分の作ったシチューをたっぷりと土鍋に入れて渡した。
「こりゃあ、おいしそうだねぇ」
マーサは、にこにこしてそれを受け取った。
土鍋を覗き込み
「森のキノコがたっぷりだね。あら、珍しい!イシイオ茸まで入っているよ」
マーサが帰ると長老とクリアは食事を始めた。
「行きたくないな…」
クリアはポツリとつぶやいた。
「行かんで済むならそうしたいもんじゃが…。何か起こりそうな気がするんじゃよ」
長老はシチューを美味そうに口へ運びながらそう言った。
「何か… 私にしか出来ない事なのかなぁ?」
クリアは納得のいかない顔で聞く。
「この村は昔、エルフが住んでおったと言い伝えがある。
そのせいか村に住んでおると、この世界に流れる気のような物を感じるようでの。
世界樹が枯れた頃から急にこの村の中へ悪意の霧の様なものが漂ってきたと思うとるんじゃ」
それはクリアも感じていた。
「世界樹はなぜ枯れたのかしら…」
食事が済むと長老は分厚い本を取り出した。
「わしは、この本を読んだ時おとぎ話が書いてあると思ったんじゃ。
しかし、お前を預かった時、この本は遠い昔にあった本当の話じゃと思い始めたんじゃ」
「何ていう本なの?」
クリアは尋ねた。
「わからん。じゃが村に昔から伝わる古文書なんじゃ。
ほれここに、こう書いてある。」
長老は古文書の裏表紙を指差した。
そこには、こう記されていた。


ー 魔王目覚める時
古の記憶 よみがえり
世界樹に護られし
民の女王が現れ
魔を打ち砕く

その胸に白き花を抱きて ー
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