他ジャンル小説

□光と影
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薄暗いラボで、不気味な笑い声と、カタカタと言う硬質な音が響く。

キーボードを笑いながら物凄い速さで叩いているのは、ケロロ小隊のクルル曹長だった。

彼は陰険、陰湿、そのた諸々の一言で言い切れば嫌な奴である。そんな彼が、かれこれ一週間近くかけ、ある発明品を不眠不休で作っていた。

「ク〜ックックック、後もうちょいで完成だぜィ、俺様の心血を注いで作った、『ザ・人間に変わっちゃう銃』これがあれば、街で堂々と工作活動が出来るぜぇ〜」

そう、彼が作っているのは人間その物に変化出来る銃。今まで変身に使っていたペコポンスーツは、頭は元のケロン人で、体だけ人間の姿になる物だったので、かなり怪しい…言うなれば不審者で捕まってもおかしくはないような物だったのだ。

「クックック、この銃が完成すりゃあ、違和感なく、人間社会に溶けこめるぜぇ」

「それは凄いです!クルルさんって、やっぱり天才ですね!…ってゆうか創作活動?」

「……モア…、あんたいつから居た?」

突然後ろから聞こえた声に、クルルはキーボードを叩く手は休めず問い掛ける。

「はい、この話しが始まった時からいましたよ?ってゆうか完全無視?」

モアこと、アンゴル=モアは、日頃からクルルのラボで、色々と手伝いをしている。この日も発明に夢中になっているクルルの邪魔にならないよう、さりげなくコーヒーを差し入れたり、色んな雑用をこなしていた。

クルルは手元に置かれている湯気の立つコーヒーを取ると、ニコニコと邪気の無い笑顔を向けてくるモアに視線を向ける。

「…クックッ…軍曹はどうしたんだ?あんだけ金魚の糞みたいについて回ってるクセに、こんな所で油売ってていいのかぁ?」

モアは少し淋しそうに微笑むと、

「オジサマは新作のガンプラが手に入ったようで、塗料を塗るからと、部屋は立ち入り禁止なんです…ってゆうか空気汚染?」

…相変わらず侵略よりもガンプラ作りが優先か…しょんぼりしているモアを見ると、何故か無性にイライラとした気持ちが込み上げてくる。

「…チッ、俺も暇じゃねぇんだよ、あんたの相手をしている暇はねぇ、邪魔するつもりならどっか行きなぁ」

「邪魔するなんてとんでもない!…あ、でもクルルさんが私が居ると集中出来ないって言うならすぐ出て行きます」

モアは慌てて立ち上がると、出口の方へと向かう。

「…待ちなぁ、俺がお前ごときが居るだけで集中出来ない訳がねェダロ?ふざけた事言ってんじゃねぇよ」

その言葉に出口へと向けていた足をピタリと止め、モアは静かにクルルの側へと戻る。

「…側で見ていてもいいですか?」

「…チッ…好きにしなぁ、ったく…何が楽しいんだか…」

画面を見つめたまま、ブツブツと文句を呟くクルルに、

「私、クルルさんが物を作っているのを見るのが好きなんです」

微笑みながら、少し照れたように答える。

「…………クックッ〜、バカな物好きも居たようだぜ…」

…まぁ、悪い気分じゃ無いがな…。

モアの純粋な視線に多少のいたたまれなさを感じつつ、クルルは今日も何だかんだでモアと共に居る。

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