BOOK(ドラズ)

□図書館HAPPENING
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「ん…キッド、もうちょっと右」

「おう。……この辺か?」

二十二世紀、ロボット学校。

この施設の図書館は、蔵書数が多く、ジャンルも豊富だ。

ドラミは、キッドに肩車をしてもらって、書棚の上段に手を伸ばしていた。

卒業生である彼女たちが、母校にいる理由。

それは、セワシの春休みの宿題の資料を探すためであった。

キッドはドラミに巻き込まれたクチで、近くには彼女の兄もいるはずだ。

「おーい、まだか?」

キッドは目線だけ上に向ける。

「待って、もう少し…」

片手を棚の本に伸ばすドラミは、もう片方の腕にも数冊抱えている。

危なっかしくてしょうがない。

――ちゃんと掴まってろよ。

キッドがそう注意しようとした矢先。

ドラミが本を引き抜いた時、彼女の体がぐらり、と傾いた。

「きゃ…!」

「おいっ、ばか…!」

重心がずれる。

ドラミの体が宙に浮く。

キッドはとっさに、彼女の下に滑りこむ。

自分をクッションに、ドラミを受け止めた。

同時に、キッドは頭を床にしたたかに打ち付けた。

「…いってて…」

落ちたのに衝撃がなかったドラミは、後ろで唸る声で、状況を理解した。

「キッド!ご、ごめんなさい…!大丈夫!?」

ドラミは慌ててキッドの上からおりて、彼を起こす。

「おう。お前は平気か?」

「う、うん」

「そっか。まぁ、気にすんなよ」

下敷きになったのに、キッドはけろりと笑っている。

「でも…」

顔をゆがめるドラミの頭を、キッドはぽんぽん、となでた。

「いいから。おれはお前が無事ならそれでいいんだから、気にすんなって。な」

「キッド…。…ありがとう…」

ドラミは泣き笑いのような顔をして、キッドの服を掴んだ。

やがて、彼女の兄が駆けつけてきて、二人は我にかえった。



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