BOOK(ドラズ)

□Par-fum
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…なんか、いい匂いがする。

つっても、どら焼の焼ける匂いとかじゃ――大好きだけども――なくて。

それは、かなり近くからする。

隣にはドラミ。

休暇に22世紀に戻って来て、一緒に映画を観ていた。

ちなみにニコフ主演。

ま、それはどうでもよくて。

他に心当たりはないし…あ、もしかして。

「――きゃっ。キ、キッド!?」

映画に夢中だったドラミを後ろから抱き抱えたら、うん、予想通りの反応。

そのまま首筋に鼻をうずめてみる。

…やっぱり。

「お前さ、なんかつけてる?」

ドラミは身をよじって、逃げようとする。

そうはいくか。

「あ、うん。ちょっとだけ香水つけてるの」

「香水なんて持ってたっけか?」

「この前、ミャーコさんとお買い物に行った時に買ったの。ボトルが可愛くて、つい。…て言うか、離して」

「ふぅん。イヤだね」

動けないように回した腕に、更に力を込める。

「で、なんの匂い?」

ドラミはおとなしくなった。

よしよし。

「すずらんの香りよ」

すずらん…。

――姫さんって、すずらんのイメージだよなぁ。

エルがそんなことを言っていたのを、思い出した。

――なんでだよ?チューリップじゃないのか?

そう言ったら、甘いな、という顔をされた。

――すずらんの花言葉は、幸福、純潔、純愛、そして意識しない美しさ!まさに姫さんにぴったりじゃないか!

――確かに、あんな良いお嬢さんは最近いないですね。

同意した王に、たまたま聞いていたらしいメッドとニコフがうんうんと頷いていた。

ちょっと癪だが、女に関してはあいつの方が的確ってことか。
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