BOOK(ドラズ)

□願い事
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七月七日。

機織りの上手な織姫様に、習い事が上達しますように、ってお願いする日。

でも、それ以外をお願いしても…きっと大丈夫よね。

だって―――。






「ねぇ。キッドのお願い事は何?」

部屋に笹(本物・兄が持ってきた)を飾ったドラミは、ソファーに寝転がっている恋人に問いかける。

「願い事?なんで?」

キッドはむくりと体を起こした。

「だって、今日は七夕だもの」

「あぁ〜。そーいや、日本にはそんなのがあったっけな」

二十二世紀でも、神秘的な行事は人々の心に根付いている。

ドラミはキッドの近くにちょこん、と座った。

「そうだなぁ。どら…」

「“どら”?」

どきりとした。

もし自分の名前が出てきたら…。

「どら焼きを腹いっぱい食いたい!!」

ずるぅっ。

満面の笑みで言い切られて、思わずずっこけた。

何かを期待した自分がいけなかった…。

そう思ったドラミだが。

「と、言いたいとこだけどさ」

「え?」

変わらない、キラキラした笑顔を向けられて。

「“ドラミとずっと一緒にいたい”」

「え…」

あっさり言われて、理解するまでに数秒。

それから顔が一気に熱くなるのがわかった。

「えっ…あっ…えと……」

あぁ、ダメ。

どきどきして、もうヒートアップ。

「そうすりゃ、うまいどら焼きも食えるしな!」

「それって…私に作れってこと?」

「あぁ!」

「…もう」






―――織姫様だって、恋する一人の女の子。

二人みたいに、彼とずっと想い合っていけますようにって。

でもやっぱり、お稽古事のお願いをしようかしら。

彼のために、お料理がもっと上手になりますように…。



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