BOOK(ドラズ)
□ロマンス飛行
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青空を遮ってにょっきりと伸びる高層ビル群。
それらにミスマッチなのは、おとぎ話に出てくるようなペガサス。
しかし、世の中が二十二世紀で、架空の生き物の正体は翼を持った白馬ロボットだと判れば、なんでもないことだった。
「…わぁ、すごい…!」
その馬ロボットに乗って、ドラミは眼下の眺めを堪能していた。
通り過ぎる建物、小さく見える人の流れ…。
いつもと同じはずなのに、なぜか違って見える。
「ドラミ、落ちないようにちゃんと掴まっとけよ」
「うんっ」
ドラミは、相乗りして手綱を取るキッドのベストを握りしめる。
「タケコプターばかりじゃなくって、こういうのも素敵ね」
「だろ?」
満足そうに笑うキッド。
「オレもたまに、こうやってエドと散歩してんだぜ」
「…そないなこと言うて、怖くて空ばっかり見とるくせに」
「エド!余計なこと言うんじゃねぇ」
キッドは口を挟んだ相棒の頭をポカリと殴った。
「あんさん、酷いわ〜」
「自業自得だ」
じゃれる一人と一匹に、ドラミはクスクス笑った。
そしてふと思う。
目の前の広い背中は、まぎれもない男の証。
温かくて頼もしくて、白馬を乗りこなす様はまるで王子様。
胸がきゅうっと苦しくなる。
「キッド。あの時は…ありがとう。一番に助けに来てくれて」
「ん?あぁ、あれか」
それは、ドラミの卒業式前日。
学園内で起きた怪異に、真っ先に駆けつけてくれたのが彼だった。
「仲間はほっとけないからな。けど…」
キッドは首をぐるっと回して、ニカッと白い歯を出してみせた。
「ドラミが待ってるって知ってたら、もっと早く行けたかもな」
「キッド…」
ぽっと染まった顔を、ドラミはキッドの背中に埋める。
「…へちゃむくれって言ったくせに」
「そうだったっけか?」
とぼける彼の腰に、ドラミはぎゅっとしがみついた。
それから、ぐるりと都市部上空を旋回して、白馬は地に降りた。
「ありがとう、キッド。楽しかったわ」
「おう!またいつでも乗せてやるぜ。なぁ、エド?」
「エドさん、いいんですか?」
二人に同時に顔を向けられ、エドはひとつ、肩をすくめた。
「ほんま、馬使い荒いわぁ」
《後書き→》