BOOK(ドラズ)

□紅い空の下で
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観覧車の列に並び、そろそろ自分たちの番になる頃。

「キッド、大丈夫?」

「……あぁ…」

キッドの顔色は、まるで何かが憑いているかのごとく澱んでいた。

「ごめんね…。やっぱりやめる?」

「…いや、いい」

そしてゴンドラに乗り込む。

地上を離れて間もなく。

「ドラミ」

腕を引っ張られて、ドラミはキッドに強く抱き締められた。

「ちょっ…キッド…!」

「動くな」

耳元で低く囁かれて、ぴくっと体が反応する。

「動いたらどうなるか分かってんだろうな」

「……ハイ」

ドスのきいた言葉に、ドラミは素直に頷いた。

ゴンドラはどんどん上昇していく。

ひたすら抱き締められていて、ドラミはキッドの肩ごしに夕焼けの空を見ていた。

一緒に景色を楽しむ、なんてことはもちろん期待していない。

ただ、微動だにしないキッドにさすがに不安になってきた。

「あ、頂上…」

キッドがわずかに動いた。

「キッド?無理しなくて――」

いいわよ、と言おうとした時。

唇を強く押し付けられた。

勢いよすぎて歯がぶつかってしまって、クラクラする。

それでも構わず、キッドはより強く押し当てる。

「んっ…むぅ〜っ…」

キスと言うより、文字通り唇を重ねるだけの行為。

「…キッ、ド…」

息を切らせて名前を呼べば、またぎゅっと抱き締めてくれた。

恐怖をまぎらわせるためだと分かっていても、ドラミはドキドキした。

キッドの肩に顔をうずめる。

地上に近付くゴンドラに、オレンジ色の光が射し込む。

やがてスタッフが遠慮がちに声をかけるまで、二人は抱き合っていた。



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