BOOK(ドラズ)

□紅い空の下で
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「キッド…どうしてもダメ?」

「ぜぇ〜ったい!イヤだ!!」

可愛らしく上目遣いでおねだりするドラミ。

対してキッドは、顔色を無くして頑なに拒絶する。

遊園地の夕暮れ時。

まさに恋人たちには絶好のシチュエーション。

仲良くデートしていた二人だが、ドラミが観覧車に乗りたいと言い出した。

キッドとしては、己の高所恐怖症は彼女も知っているはずだし、昼間だってジェットコースターなどは避けていたから、ドラミが観覧車にこだわる理由が理解できなかった。

「そんなに乗りたきゃ、一人で行って来いよ」

「やだ!キッドと一緒じゃなきゃ意味ないもん!」

キッドは大げさに眉を歪めた。

「お前のことだ。どうせ、観覧車の頂上でキスしたカップルは幸せになれる〜とか言う、ベタでくだらねー噂を信じてんだろうが…」

そこでキッドは、ぎょっとした。

ドラミの瞳いっぱいに涙がたまり、今にも溢れそうになっていたから。

「お、おい…泣くなよ…」

「だって…っ、ベタでもくだらなくても、キッドと乗りたかったのに…っ」

「ドラミ、泣くなって…」

更にキッドは気付いた。

周囲の客から自分たちに――いや、自分一人に痛い視線がちくちくと刺さっていることに。

目の前で泣いているのは、他でもない、愛しい彼女。

「〜〜っ、分かったよ!乗りゃあいいんだろ、乗りゃあ!」

キッドはドラミの手をむんずと掴み、どすどすと観覧車に向かって行った。


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