BOOK(ドラズ)

□寂しくなんて
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「キッドのバカっ!!」

寝起き早々、キッドは最愛の彼女に怒鳴られて、目を白黒させた。





タイムパトロール隊の長期任務に就いていたキッドは、任務完了後、二十二世紀の日本――ドラミのところへ癒やしを求めてやって来た。

そこまではいい。

しかし、彼女に会った途端「腹が減った」と倒れ込み、特製どら焼きを平らげた後、ソファーを占領してぐーすか寝始めたのだ。

それが半日前の早朝の事で、今はすっかり日も暮れて夕食の時間帯だ。

恋人同士なら甘いじゃれ合いを期待したいのが女心。

しかし、たっぷりと寝たキッドが呑気に「飯はまだ?」なんて言い出したものだから、たまらず爆発したと言う訳だ。

「いきなりなんだよ」

「なんだよ、じゃないわよっ!突然帰ってきて好き勝手にして、またご飯作れって!?」

「や…わりぃ」

キッドは眉根を下げる。

「それに、ロクに連絡もしないで!」

「仕方ないだろ。忙しかったんだし…」

耳も若干垂れていた。

「なによ!こっちがどれだけ心配したか…!」

「え?」

ソファーの上で縮こまっていたキッドは顔を上げた。

ドラミは己で何を言ったのか分かったらしく、顔を隠して逃げる。

「ちょ、待てって!」

キッドは彼女を追いかけて、後ろから抱え込んだ。

「やっ!離して!」

「そうはいくか」

じたばたともがくドラミのお腹で腕をしっかり固定する。

「なぁ、心配してくれたのか?」

「し、してないもん!」

「まったまたー。オレがいなくて寂しかったんだろ?」

「寂しくないもんっ」

ぶすくれたドラミの頬にキッドは自分のを寄せた。

そして耳の傍で囁く。

「オレは、寂しかった」

「えっ…」

「ドラミにすっげー会いたかったしな」

「そ、そんなこと言われたって…」

キッドはドラミの頭を優しく撫でる。

「ほら。正直に言ってみ?」

「う…。べ、別に寂しくなんて……寂しく、なんて…っ、うぅ〜っ」

大きな瞳に涙が滲む。

キッドは彼女の体をくるりと回して、今度は正面から抱き締めた。

「よしよし」

「…っ、寂しかったんだからっ」

「うん」

「心配したんだからぁ…!」

「うん」

それからドラミは、キッドの胸にしがみついたまま、ありったけの文句を並べ立てた。

キッドはそれを、ただひたすら聞いていた。



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