BOOK(ドラズ)

□ばぁか
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むすーっ

ドラミは頬をこれでもかと膨らませていた。

「ドラミ?」

ぷいっ

キッドが顔をのぞき込んでも、逸らすばかり。

「なに怒ってんだよ」

「怒ってないもん」

「じゃ拗ねてんのか」

「拗ねてないもん」

「…やっぱ怒ってんだろ」

ドラミはそっぽ向いたまま。

それが気に食わなくて、キッドはドラミの頬を両手で挟み、強引に自分の方を向かせた。

「むぅーっ」

「はは。へちゃむくれがもっとへちゃむくれになってら」

「どうせへちゃむくれのがきんちょだもんっ」

「なんだよ急に」

キッドが手を離すと、ドラミはそのまま俯いた。

「キッドは…私なんかよりもっと大人な人がいいんでしょ?」

「は?なんでそうなる」

「だって、さっきすっごい綺麗な人と話してたじゃない…!キッド、楽しそうだったもん」

「さっき?」

キッドは頭をひねる。

そう言えば、ドラミとのデート中に昔馴染みと会った。

キッドとしてはただの世間話のつもりが、ドラミには楽しそうに見えたと言う訳か。

それは、つまり。

「…ははっ」

勝手に頬が緩む。

「なに笑ってるのよっ!また子供っぽいとか思ってるんでしょ!?」

「いやいや」

「嘘っ!やっぱり私なんて――っ」

掴みかかるドラミの手を引き、勢いのままにキッドは抱きしめた。

「ばぁか」

逃がさないように、強く。

「どんなに美人だろうが関係ない。オレが好きなのはドラミ、お前だからな」

ドラミはキッドの服をギュッと掴む。

「…がきんちょでも?」

「おぅ」

「へちゃむくれでも?」

「あぁ」

ドラミは顔を上げた。

優しく微笑むキッドと視線がぶつかる。

「…否定はしないのね」

「だってそうだろ」

「これだからガサツ君は…」

「そのガサツ君を好きになったのは誰だ?」

返事の代わりに、ドラミは楽しげなキッドの胸に顔を埋めた。



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