BOOK(ドラズ)
□願わくば…
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「…ひっ、く…うぅっ…」
「おい…泣くなよ…」
ぼろぼろと涙を零して泣きじゃくるドラミを、キッドはただ困り顔で見ていた。
愛しい少女には笑っていて欲しい。
しかし、どうにも乙女心と言うものが分からないのがこの男なのだ。
「だって…っ、今度行く星はっ、遠いんでしょう?それに…ひくっ、危険なところだって…」
しゃくりあげながら話すのが苦しそうで、キッドはドラミの背中を撫でてやる。
「遠いっつったって、たかが三千光年くらいだ」
「三千光年も離れてるじゃないのっ!宇宙にはブラックホールもあるし、宇宙海賊だっているのに…!」
うわーん、とドラミはまた泣き出す。
「あのな…オレがそんなヘマしたことあったか?」
「ないけど…!でも…、でもぉ…っ」
キッドは大きな溜め息をついた。
そして、少女に自身の帽子を乱暴にかぶせる。
男性用のテンガロンハットは彼女にはやはり大きくて、頭がすっぽり隠れてしまった。
「へ…?」
一応涙が止まったらしいドラミを、キッドは帽子ごと抱き締めた。
「待ってろよ。オレは、お前のところに戻ってくる。絶対にだ」
力強い腕に包まれて、逞しい胸に埋もれながら、ドラミは頷いた。
願わくば、彼が無事でいられますように…。
《後書き→》