秀徳夢・他

□わんことイケメン
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一年の時から気になっていた伊月くん。
バスケに熱心で、女子から誘われても断ってるっていう話だ。

この度、次の日曜は練習もオフだという情報を仕入れた。
またとないチャンスに、少しの期待を抱いて、話しかけた。

「日曜日……空いてたりする、かな?」

そう切り出せば、伊月くんが何度か瞬きして「え、オレ?」と訊くから、私はこくこくと頷いた。

「んーと、どうすれば……そうだ、キミは犬平気?」

「う、うん。大丈夫」

「じゃあ、十時に公園な」

はにかんだ彼に、心臓がトクトクと大きく動いた。







日曜日。

「きゃっ。舐めちゃだめだって〜」

伊月くんが連れてきた犬が、膝に乗ってイタズラしてくる。
可愛いけど、人懐っこすぎて困ってしまう。

隣で伊月くんが楽しそうに笑ってる。

「2号に気に入られたみたいだな」

「2号って?」

「コイツの名前さ。テツヤ2号」

伊月くんが耳の裏を撫でてあげれば、わんこは気持ちよさそうに目を閉じる。

「バスケ部の後輩にテツヤって名前の男子がいてさ。そいつと目がそっくりなんだ。だから2号」

「そ、そう」

反応に迷うネーミングセンスだ。

「わんっ」

わんこ……2号くんが、構ってほしそうにころりとひっくり返った。

「なーに? 撫でてほしいの?」

白くて柔らかなお腹をわしゃわしゃ触ってあげると、体をよじらせてじゃれてくる。

「可愛いね、2号くん」

「わん!」

全く同じ声が耳のそばでして、思わず飛び上がった。
反射的に首を回す。

品よく整った伊月くんの顔に、いたずらっ子みたいな笑みが浮かんでいた。

「い、伊月くん……? あれ?」

2号くんに不思議そうに見上げられる。
その小さな体を、彼が横から抱き上げた。

「あんまりコイツとばっかり遊んでると、妬けちゃうな」

伊月くんが冗談か本気かわからない調子で言う。

「……そ、それって、どういう意味……?」

「さて。どういう意味でしょう?」

彼は2号くんの前足をちょいっと上げてみせた。
クールそうな彼の意外な一面は、あざとい?



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