秀徳夢・他

□伸びやかな春の日に
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花の匂い伸びやかな春の日。

秀徳高校への入学を明日に控えたひよは、従兄とともにショッピングへ出ていた。
店の装いも、街を歩く人々の表情も春めいて、そこに飛び込めば、一緒に楽しい気分になってくる。

休憩に入ったカフェのメニューも、やっぱり華やかだった。
スクランブル交差点を眺められる二階席を陣取って、ひよは従兄を待つ。

「お、いい場所取ったじゃん」

商品が乗ったトレーを手にした従兄が戻ってきた。

ほんの小さなことでも、従兄に褒められると、ひよはほわっと温かい気持ちになる。

「清くん、ありがとう」

「ん」

従兄はトレーをテーブルに置いて、イスを引く。
長い脚が窮屈そう。
自分のぶんのハニーカフェオレを引き寄せて、スティックシュガーを入れている。

ひよも、お願いしたココアに口をつけようとしたが、はたと気づいた。

二人のカップがあって、それの他に。
ふんわりと柔らかそうで、ピンク色が可愛らしい、桜のシフォンケーキがあった。
レジカウンターで期間限定品だと勧められたものだ。

ひよは首を傾げる。

従兄が甘党なのは知っていたけれど、アスリートはスウィーツも欲しいものなのだろうか。

「清くん、ケーキも食べるの?」

「いや? これはお前の」

と、トレーごとひよの方へ押す。

「私?」

ひよが瞬けば、従兄は口の端をにっと上げた。

「そ。兄様からの入学祝いだ。ひよ、こういうの好きだろ?」

こんなだから従兄は格好良くて、きゅんとしてしまう。
だからひよは、自慢の兄でいてくれる彼が大好きだった。

「うんっ!」


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