秀徳夢・他
□好きってこと
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「緑間くん、お疲れさま」
「あぁ」
部活の後の自主連の時間。
誰もいなくなった体育館で、小休憩の緑間くんにタオルを渡す。
ちなみに、一緒に練習してた高尾くんはお手洗いに行った。
「二人はいつも遅くまで残ってるよね。バスケ好きなんだね」
「オレは好き嫌いでバスケをやっているんじゃないのだよ」
あれ?
意外な言葉が返ってきた。
「それじゃあ緑間くんは、バスケが好きじゃないの?」
「そういうことでもないのだよ」
じゃあどういうことなんだろう。
頬に手を当てて考える。
「やるからには勝利を得る。そのために人事を尽くしているのだ」
「人事?」
「人事とはすなわち、人の為せる事だ。勝つために、オレは人として出来うる限りの事をしている。それだけだ」
「そっかぁ」
緑間くんの言い方は、まるで、そうであってしかるべき、と言っているみたい。
けれど……。
「でも、やっぱり楽しくなかったら飽きちゃうし、あんな風にずっと続けられないと思うんだよね」
「そうか?」
「うん。それに、シュート練習してる時の緑間くん、いきいきしてるもん。それって、好きってことなんじゃないかな」
きっと、そうなんだと思う。
私も一緒にやってて楽しいから。
好きっていう気持ちは、周りにも伝わるんだよ。
そう思ってたら、緑間くんが、口こそ開いてないけど、あっけに取られたように私を見ていて。
彼の雰囲気が、いままでになく優しくなった。
「――そうか」
こういうのを、優雅って言うんだと思う。
「み、緑間くん……いま……」
綺麗な人が綺麗に笑ったら、どう表現すればいいのかな。
「ひよ――」
足元がくらりと揺れた。
もう一度、見たいとか思ったらダメかな。
あぁ、でもダメかも知れない。
虜になってしまいそう。
《後書き→》