秀徳夢・他

□星に願うは恋の行方
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ガラガラガラ……

人の歩いていない住宅街に、チャリアカーの転がる音が響く。
昼間だと恥ずかしいけれど、暗くなった今なら逆に開き直れちゃうから不思議だ。

リアカーに座る私の腰の下には、ビビッドカラーのクッション。
今日のラッキーアイテムだとか。

「緑間くん、高尾くん。なんか送ってもらっちゃってごめんね」

「いーって」

と応えたのは、前で自転車をこぐ高尾くんだ。

「オレらこそ、こんな遅くまで練習つきあわせちまって、ごめんなー」

「ううん。私マネージャーだし、私が残りたくて残ってたんだもん」

部活のあと、緑間くんと高尾くんは、いつも最後まで残る。
そんな二人のサポートをしたくて、帰っていいんだぞと言う従兄を説得して、居残り組に加わったのだ。

「でも遠回りなんじゃ……」

「ひよちゃんは気にしなくていーの」

「ひよが気にする必要はない」

高尾くんと、はす向かいでおしるこを飲んでる緑間くんが、声を揃えて言う。

「それに、これは宮地さんの厳命でもある」

「清くん?」

従兄の厳命とはなんだろう。

「そうそう!」

高尾くんいわく。

『何があろうとひよを無事に送り届けろ。もしひよに何かあってみろ、埋めんぞ!』

「――ってな」

「ふふっ」

従兄らしいセリフと高尾くんの声真似のうまさに、思わず吹き出した。

「だから、女の子は黙って送られてればいーの」

前から腕が伸びてきて、つんっと額をつつかれた。

触れられた場所をなでる。

「わかった?」

「は、はい……」

そんなことされたら、大人しくするしかないよ。
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