秀徳夢・他

□どっち?
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抱き抱えられてるような体勢のまま、額に手が当てられる。

「やっぱ熱あんじゃん。これで部活出るつもりだったの?」

「う、ううん。監督に断って帰ろうと思ってて……」

「賢明な判断だな」

前の彼が頷いた。

「んじゃ、家の人に迎えに来てもらいなよ。監督には俺らから言っとくからさ」

「ん……。ありがとう、高尾くん、緑間くん」

同級生の好意に素直に甘える。

――優しいなぁ、二人とも。

「とりあえずは、保健室だな」

と、彼は体を離して、こちらに背を向けてしゃがんだ。

「ほい、乗って」

「え?」

乗ってって、え、これは、まさか……。

「待て。下心が見えすいているぞ、高尾」

と、逆方向から声がしたと思ったら、お姫様よろしく、肩を抱き寄せられた。

「いやいや真ちゃん、下心ってなに!?そういう発想する方が変なこと考えてんじゃねーの!?」

「か、考えてなどいないのだよ!とにかく、保健室へは俺が連れて行く。高尾、お前はドリンクを運べ」

そのドリンクは下に置かれていた。

抱かれた肩はそのままに、彼の片腕が下へ。

膝の裏をすくい上げられて、かかとが床から浮く――……その前に、体が半回転して。

抵抗もできないまま、SGの腕の中から、PGの胸の中に移動していた。

「んなことしたら、余計具合悪くなるって。おんぶの方が、運ぶ側も運ばれる側も楽なの」

頭の上で、静電気が生まれた気がしたのは、どうしてだろう。

「フン。ならば、本人に選ばせたらいいだろう」

「いいぜー。てなワケでさ」

どっち?と首を傾げられても困る。
長身の彼にも、問うような視線を向けられて……もう、わからない。

世界がぐるぐると回って、そこでふっと、意識が飛んだ。



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