秀徳夢・他

□粗暴な鎖骨
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等間隔に並べられ、テーブルクロスのかけられた机。
そこに、女子マネージャーチョイスの花を飾って、出来上がりだ。

「ま、こんなところか」

宮地清志は教室をぐるりと見回した。

秀徳高校文化祭ーー秀徳祭で、男子バスケ部は執事喫茶をやることになっていた。
今日が初日だ。
セッティングもミーティングも終わり、あとは身なりを整えて、開店時刻を待つばかり。

身につけたシャツは普段着ているものと同じだが、一応、新品をおろした。
皺が寄るから腕まくりはしていない。

宮地は荷物から白い布を取り出し、首に巻く。
それはクラヴァットなるもので、昔風のタイだ。

真っ白なクラヴァットはレフ効果もあり、明るい色の髪を、いつもより品良く見せている。

結び目を作った後で、締め方がきつかったと思い直し、結び目を引っ張って緩める。
やや粗暴なその仕草と垣間見えた鎖骨は、同じく着替えた部員たちの視線をーー同性であるにも関わらずーー惹きつけた。

宮地はベストに腕を通し、上着をはおった。
やはり気になるのか、わずかに顎を反らして首元をいじっている。
喉仏の凹凸ははっきりとして、陰がある。
本人は意識していないがーー出し惜しみのない高校生男子の色気に、誰かが喉を鳴らした。

「……んだよ」

己に不審すぎる視線が集まっていたことに気付き、宮地は困惑を、ひそめた眉とひん曲げた口元に表す。

部員らはそそくさと目を逸らした。

「いやあ、宮地さんサマになってますね〜」

褒めそやす高尾和成の横で、緑間真太郎も殊勝に頷く。

「お前らに言われたくねぇよ」

古典的な衣装も着こなしてしまう高尾のセンスは、大したものであるし、緑間とて、性格を写した全く隙のない着方は似合いすぎている。

「宮地さんよりデレいただきましたー!」

「調子に乗んな!」

かわいい後輩の頭をぐりぐりと撫でてやる。
下から悲鳴が聞こえたが、無視だ。

ワックスを手の平に伸ばして、髪にもみ込む。
サイドを後方へさっと流し、毛先に動きを。
最後に前髪をかき上げれば、童顔長身の、美執事の完成である。

この秀徳祭の件については、役割を半強制的に決められて、言ってしまえば、お遊びだ。
けれども、ぞんざいにするのは誰よりも自身が許さない。

やるからにはーー人事を尽くす!

前髪を上げた瞬間の従兄と目があってしまったひよは、彼は格好いいと再認識した。
例えば今、蜂蜜色の髪から水が滴っていたりしたなら、目があった女子たちはドミノのように卒倒するだろう。

給仕は執事に扮した男子部員だから、女子マネージャーは裏方だ。
きっと……いや絶対に、目が回る忙しさになる。

ーー開店の合図たるチャイムが鳴った。



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