秀徳夢・他

□上級生男子
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部活動後の火照った体を落ち着かせてくれる風は、あまり優しいとは言えなくなってきた。
昇降口をでたとたん、そんな風がぴゅうとぶつかってきて、ひよは首を縮めた。

「今日はさみぃな……」

並んだ従兄も、不意打ちに肩をすくませて、襟を片手で寄せている。

「ひよ、さみぃんじゃねえの?」

どうやら、無意識に自分を抱きしめていて、それを従兄が見咎めたらしい。

「ううん、大丈夫ーー」

首を振ろうとしたところ、ごまかしきれないくしゃみが出てしまった。

「ほれ、見ろ」

「む〜」

自身のいじっぱりな部分が、ひよの頬を膨らせる。

ちょっと待ってろ、と言い置いて、従兄は校舎に戻った。

宮地は傘立てにドサッと荷物を置く。
その上に、学ランがばさりと落とされた。

白シャツに、オーバーサイズぎみのベージュカーデ。
季節的に薄着であろう格好になった従兄が、カーデのボタンにまで指をかけていた。

「清くん……?」

ボタンを次々はずし、身体から剥ぐように脱ぐ。
白シャツが引っ張られて、浮き上がった鎖骨と、その下の窪みがちらりと見えた。

見とれかけてーーあわてて目をそらしたひよに、大きなカーデがかぶさる。

「これ着てろ」

「でも、それじゃあ清くんが寒いよ!」

「俺はまだ体あったけーからいいんだよ。マネージャーに風邪なんてひかれたら、みんな困るだろ」

口答えした仕置き、とばかりに頭をぎゅーと押さえられ、手をばたつかせた。

従兄のカーデは、ひよには着られた感じになってしまった。
袖はすっぽり隠れ、スカートも裾がほんの少し出ているだけだ。

もとからの男女の違いもあるが、それほど従兄が大きいのだと、改めて思う。

「ちゃんと着たら、帰るぞ」

学ランを着直した従兄が、二人分の荷物を持っている。
ななめに頭を傾けて、反った首筋のラインも年上っぽい。

デオドラントの爽やかな匂いが、ひよをあたたかく包んだ。



《後書き(という名の宮地語り)→》
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