長編

□兄弟は手足たり
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「私に何か御用ですか?」



静蘭は後ろを振り向かずに低い声で言った。五つの気配が集まってくるのを感じる。



「気づいておられましたか。さすが公子一優秀と言われた清苑公子…」



その言葉に静蘭は思わずピクリと反応してしまった。

心を落ち着かせ、平静を保つとゆっくりと振り返った。



「私はシ静蘭です。ただの一介の衞士ですよ?」

「では、シ静蘭殿…あなたに会いたがっている御方がいるのですが、一緒に来てもらえますか?」



静蘭は何気無い様子でいつもの笑顔を浮かべて言った。相手の男の方もあくまでも下手に接してくる。



「生憎、これから仕事なんです。また今度にして頂けますか?」

「それは残念です。あまり手荒なことはしたくないのですが…」



すると男達は一斉に剣を抜いた。

一瞬で静蘭の目付きも鋭くなった。スラッと剣を抜く。



「それが貴方が先王から下賜されたという干將ですか?」

「あぁ…よく斬れる…」



静蘭がニヤリと笑むと、目にも止まらぬ速さで男たちの懐に飛び込んだ。



「な…にっ……」



次々に男たちの首をカッ斬る。あっという間の出来事だった。

百を超える兇手を相手にしてきた静蘭にとってこの場を切り抜けるけとは容易かった。



「うっ………」



一人を残して他の者は即死だった。静蘭は意識のある男の首を掴むと壁に抑えつけた。



「五人とはナメられたものだな…命令したのは誰だ?誰が私に会いたがっている?」



静蘭の冷たい瞳に男はヒッと息を飲む。口を割らない男に静蘭は手に力を込める。



「ぐぁ……死ん…で…も…言わん」



男は力を振り絞って言うと、隠し持っていた短剣を振り上げた。静蘭は反射的に避けたが、短剣は頬をかすめた。ツーっと鮮血が流れる。

男はそのまま短剣を自分の腹に突き刺し、自刃した。


静蘭は冷めた瞳で男たちの亡骸を見やると、何事も無かったように干將についた血を拭い鞘に納め、その場を後にした。







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