長編
□兄弟は手足たり
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第一章転換
今日も邵可邸は爽やかな朝を迎えた。
「では…お嬢様、行ってきます」
「あっ!!静蘭、今日はお夕飯までに帰ってこられる?」
「はい、無理にでも帰って来ますので大丈夫ですよ」
静蘭が内心、黒い笑みを浮かべた。実際には秀麗用の優しい微笑みだ。
出世に目覚めた静蘭は以前より忙しくなったらしい。それでも彼の巧みな話術でなるべく早く帰れるようにしている。
「お嬢様もあまり無理をなさらないで下さいね」
「大丈夫よ。行ってらっしゃい、静蘭」
秀麗の眩しい笑顔に見送られ、静蘭はいつものように歩いて城へ向かった。
「あっ、静蘭〜!!これからお城に行くの?」
静蘭が歩いていると子供たちが何人か手を降って近寄ってきた。時々、チャンバラごっこをして遊んであげている子供達だ。
「そうだよ」
「今度またチャンバラごっこしよ〜ぜ」
「うん、またね」
笑顔で子供達と別れると静蘭はまた歩き出した。子供達の無邪気な姿が微笑ましい。
いつもののどかな街並み……のはずだった。
静蘭はチラリと背後を見やる。上手く気配を消してはいるが、そういうものに敏感な静蘭は気づいていた。
つけられている。
《三人…いや五人か…》
静蘭は瞬時に人数を感じとると、どうしたものかと平然を装いながら思考を巡らせる。
気配を感じた時になかなか腕の立つ者達だとも思った。気配の消し方など訓練しなければ、そうそうできるものではない。
静蘭はそっと人気のない路地裏に入った。
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